プラチナの主要生産国で、新型コロナ感染拡大が目立ち始め、供給減少懸念が生じている

 足元のプラチナ価格の反発は、新型コロナウイルスの感染拡大で受けたダメージを回復させるために行われている、欧米の大規模な金融緩和によって起きた“株高・金高”が、きっかけとなったと述べました。

 今後の展開を考える上で、プラチナの主要な鉱山生産国で、新型コロナウイルスの感染拡大が目立っていることに触れる必要があると思います。

図:プラチナの供給の内訳(2019年)

出所:ジョンソン・マッセイのデータをもとに筆者作成

 プラチナの供給は、4分の3が鉱山生産、残り4分の1がリサイクルです。鉱山生産の70%超(全体の54%)は南アフリカ、次いでロシア、ジンバブエ(アフリカ大陸の最南端の南アフリカに隣接)、北米です。

 新型コロナウイルスは、3月上旬にパンデミック(世界的な大流行)となったわけですが、足元、プラチナの主要鉱山生産国での感染拡大が進行中です。

図:南アフリカとロシアの新型コロナウイルス感染者(累計) 単位:人

出所:Bing-COVID-19-Dataより筆者作成

 プラチナの鉱山生産の主要国である南アフリカとロシアの新型コロナウイルス感染者数は、4月中旬に比べ、大きく増加しています。南アフリカはおよそ4倍、ロシアはおよそ6倍です。ともに増加傾向が続いています。

 先進国のような、財政・金融の両面の手厚い策が講じられにくく、それでいて経済の停滞を防ぐために経済活動を継続しているため、感染者が減少しにくい状況が続いています。

 例えば、今後、南アフリカ、ロシア国内のプラチナ鉱山や精錬所、輸送に関わるインフラなどでクラスター(集団感染)が発生した場合、プラチナの供給に支障が生じる可能性はゼロではないと考えられます。

 南アフリカの鉱山会社の労働組合は賃上げなどを要求し、しばしばストライキを起こしますが、過酷な鉱山での労働に、新型コロナウイルスの感染拡大という困難な条件が加わった場合、これをきっかけに、ストライキが検討される可能性もあるかもしれません。