危機時の経済予測は難しい

 経済が急速に悪化すると経済予測は急速に難易度が増します。というのも、通常の経済予測では、実体経済を中心に分析しますが、実体経済の変調だけではなく、金融面にまで波及すると、資金繰りの悪化による倒産や格付けの悪化、債券のデフォルトといった非線形なショックが生じるからです。

 今のところ、金融面には深刻なショックは生じていませんが、海外では航空会社が倒産する事例が出てきていますし、原油の過剰供給と需要急減による逆オイルショックがジャンク債や産油国のソブリンリスクを急速に高めています。世界的な貿易量の減少や活動制限の影響も大きく、IMFが4月に公表した「Global Financial Stability Report」でも警戒を強めています。

 日本銀行が公表した2020年度の実質経済成長率の見通し(政策委員の大勢見通し)は、▲3.0~▲5.0%。IMFが年ベースで▲5.2%と予測しているので、それと大差ない見通しと言えます。

 もっとも、先行きの見通しについては、展望レポートで、「先行きについては、感染症の拡大が収束する時期や内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、不透明感がきわめて強い。」、「金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提としている」、「そうした前提には大きな不確実性がある。」としています。