配偶者居住権の設定後に自宅を売却する場合は?

 もし配偶者居住権を設定した後、配偶者居住権を合意の上解除する場合、敷地所有者(子など)としては、配偶者に対し、配偶者居住権相当額の対価を支払う必要があります。もし対価を支払わない場合は、相当額につき配偶者から子へ贈与があったとされ、子は贈与税を支払う必要が生じます。

 例えば、妻と子の間で不仲になり、妻が自宅を出て行き、子は自宅を売却して現金に換えようとしているようなケースです。

 自宅を売却する際は、配偶者居住権は消滅させておく必要があります。この時に、子から配偶者へ対価の支払いが必要です。対価を支払わなければ、贈与税の課税対象となります。

 また、不仲ではないにせよ、自宅を売却しなければならない事情が生じた場合も同様の扱いになります。

 もちろん、このような課税上の注意点を理解の上、あえて実行するのであればよいのですが、「相続税の節税になる!」というだけの安易な理由で配偶者居住権を設定するのは危険です。専門家にも相談の上、慎重に検討するようにしてください。

 配偶者居住権の規定はまだ開始されたばかりで、まだ実務が積み上がっていません。そのため扱いが不透明な部分もありますが、それについては今後だんだんと明らかになってくると思います。