4月に注目したい新興株の動き

「緊急事態宣言」を一向に出さず、新型コロナウイルス対策で後進国となった日本。早く鎮静化して欲しいと願う国民の想いとは裏腹に、対策の遅れがもたらした遺恨は非常に大きくなっています。当初の想定を大きく修正し、「自粛期間の長期化」を考える必要が出てきました。

 ある証券会社のレポートでは、最悪シナリオとして「自粛期間1年以上」と記載していました。他人の資金を運用する機関投資家は、最悪まで想定して動くと思います。「あまりにも大きく下がったから」なんて理由で、自粛による業績影響不可避な銘柄を買うことなど今は出来ないでしょう。

 日本の投資家は1月後半から、新型コロナウイルスの感染拡大に敏感でした。マスク需要増加の思惑でマスク・防護服の関連株が大相場となりました。2月にはテレワーク関連株や巣ごもり関連株、3月は人工呼吸器関連株なども値上がりしました。4月もこうした動きが形を変えながら繰り返されると思います。

 これは前述の機関投資家も同じです(TOPIXなど指数に連動することを目指すパッシブファンドは除いて)。ひふみ投信などを運用するレオス・キャピタルワークスが、2月下旬に過去最大の現金比率(31%)にしていたことは話題になりました。そのレオスは現金比率を高めると同時に、米国株のドミノピザ(宅配ピザ)、ZOOM(ビデオ会議システム提供)、ニューオリエンタル(中国のオンライン教育サービス大手)を買っていました。「今はこう動くしかない」というお手本を示しています。

 株価が安くなった株は急増しました。割安に見える株も急増しました。ただ、今は緊急事態です。そんな尺度で銘柄を選んで動いたとしても、機関投資家を含めた周りの大勢が動けない状況では、期待通りのパフォーマンスにはならないでしょう。本当は、今月4月は15社のIPOが予定されていました。そのうち10社が、現時点でIPOの中止を決定しました。一度中止すると、次に上場申請できるのは早くて5年後とも言われます。それでも中止する、その意味は大きいと思います。

 3月にかけた業績悪化分を反映し、今期の業績予想を下方修正する銘柄は新興株でも増えるでしょう。ここは織り込んでいます。来期の業績予想を「未定」と出す企業も増えるでしょう。当然、ウイルスが相手なので誰にもわかりませんから、ここも織り込み済みでしょう。ただ、だから安いところを買いましょうとは言えないのが今回の特殊性です。業績予想が「未定」の企業を、他人の資金を運用する機関投資家が買えるでしょうか? また、決算説明などで企業が機関投資家に訪問することも難しい今、ネットで手に入る開示情報だけになるケースも増えるでしょう。それだけで、機関投資家が買えるでしょうか? ということを考えると、ある程度長期保有する中小型ファンドなどの買い手が消極化し、短期勢の比率が高まることが想定されます。とすれば、値動きの良いテーマ株に短期割り切りで付く…そうした投機的な値動きが新興株市場でも長期化するのではないかと考えます。