3月に注目したい新興株の動き

 数年に1回級の地合い悪化を経て迎えた3月の新興株市場。今回、マザーズだけでなく、ジャスダックも破壊的に崩れた点で2018年12月以来の惨状だったといえます。2月末時点の二市場の信用評価損益率は▲21.35%でした。この数値は2018年12月第3週の▲19.21%よりも悪い状況です。

 ただ、新興株市場の場合、信用評価損益率が示す既存ポジションのダメージはオシレーター指標(逆張り指標)として機能するケースが非常に多いといえます。信用評価損益率が▲20%級に悪化していることに加えて、「前週比で何ポイント悪化したか?」が重要といえます。2月最終週は前週比で一気に6.1ポイント悪化(▲15.25%→▲21.35%)しました。

 こんな状態は過去にあったか? でいえば、アベノミクス相場以降でいえば2016年2月第2週と今回の2回だけ。2016年2月第2週は信用評価損益率が▲25.76%で、前週比で9.26ポイントも悪化した局面です。この時期は、原油の急落が止まらず、産油国へのエクスポージャーが多い欧州大手銀行の信用不安に発展。レバレッジをかけたポジションの解消“デレバレッジ”の猛威が世界のマーケットを襲った時期でした。今回は状況が違いますが、リスク回避の強さでいえば似た部分もあります。

 ただ、日本の新興市場も最悪を見た2016年2月第2週の先には、強烈なリバウンドが待っていました。2016年2月第2週の終値667ポイントだったマザーズ指数は、翌週から10週連続の怒涛の上昇。2016年4月第3週の終値1,221ポイントまで、指数で8割強も上昇しました。個人投資家の信用買いがフローの中心という、珍しい構造の新興株市場。この市場にとって、溜まった信用買い残が大きく減ることこそ、需給を好転させる唯一の道です。

 東証の開示データによれば、2月最終週の個人投資家はマザーズ市場で大幅売り越し(現物107億円売り越し、信用85億円売り越しで合算すると「193億円売り越し」)でした。売り越し金額的には、アベノミクス相場以降で3番目の大幅売り越し。追証発生に至るほどの下落により、相当量の見切り売りが入ったこと、そして逆張り買いも少なかったことを示しています。

 興味深いのは、同じ週の東証1部市場。東証1部では、個人投資家は大幅買い越し(現物3,163億円買い越し、信用2,119億円買い越しで合算すると「3,163億円買い越し」)でした。新型コロナショックによる急落場面で、東証1部銘柄には逆張り買いが殺到したものの、新興株市場は圧倒的売り超。全く真逆の投資行動が起きていたというのが事実です。ということは、いわゆる“セリング・クライマックス”に近い状態が新興株市場に限って発生していた可能性は高いともいえます。

 2月最終週に信用買い残が増えた(=逆張り買い)新興株を調べると、前週比で金額が最も増えたのが澤田HDの2.9億円、次いでマクドナルドの2.8億円、すららネットの1.4億円でした。全銘柄で最も増えた銘柄でわずかこれだけ。一方で、信用買い残が前週比で減ったほうがワークマン▲15.0億円、ジーエヌアイ▲10.6億円、そーせい▲9.4億円、JTOWER▲6.7億円、オンコリス▲5.9億円など…。人気銘柄の信用買い残が大幅に減少した形跡が見られます。

 この状況で突入する3月の新興株市場。ファンダメンタルズより需給で壊れた2月の反動に注目です。反動局面で優位に立つのは、信用買い残を大きく減らして株価が大きく下がった銘柄でしょう。今見るべきは需給だけ。なお、楽天証券では2月の口座開設数が歴代業界最多の10万口座を超えたそうです。株価が大きく下がった先には、こうした新たな逆張り投資家が生まれる―これも繰り返されてきたことです。ガンバレ新興株!