対岸の火事、と楽観していた欧米にも余波
◆第三の矢:有事ムード(新型コロナウイルス起因の有事ムードを想定)
以下の図“2月3週目以降の新型コロナウイルスをめぐる環境の変化”のとおり、2月3週目と4週目以降とでは、新型コロナウイルスを取り巻く環境は大きく変化しました。冒頭の図“新型コロナウイルスの感染者(前日比)”で示したとおり、中国以外で感染者が急増し始めたタイミングです。
株式、通貨、商品(コモディティ)など、ジャンルを超えた幅広い市場の中心は、欧米だと筆者は感じています。欧米にとって2月の3週目までは、中国や東アジアで感染が拡大していた新型コロナウイルスは、ある意味“対岸の火事”だったのかもしれません。
しかし、2月4週目に入り急激に欧米で感染が拡大してきた新型コロナウイルスが、いよいよ欧米に“飛び火”してきたことで、強い不安が欧米市場に広がったわけです。世界の各種市場の中心地である欧米において強い不安の台頭は、資産保全機能を期待した金の物色妙味を強めたと言えます。
図:2月3週目以降の新型コロナウイルスをめぐる環境の変化
足元の金相場にある3つの上昇要因を「三本の矢」に例えました。留意点は、これらの矢はあくまでも数日から数カ月程度の、短期あるいは中期的な要因とみられる(主要株価指数とドルの下落、有事の持続期間が数カ月以上の長期にわたることは考えにくい)点、つまり三本の矢が金相場を現在のように支え続けたとしても、長くて数カ月である可能性がある点です。
それ以上の長期の金価格の動向については、以前の「[緊急レポート]金、パラジウム、大幅上昇!新型肺炎、欧米へ“2つの飛び火”」 で述べた、四半期ごとの統計で確認ができ、世界全体の金消費の4割程度を占める“中央銀行の買い+インド・中国の宝飾向け消費”という、長期で保有する投資家・消費者の動向に目を配ることが必要だと思います。
図:金相場の上昇要因のイメージ