OPEC総会で発表された3本のニュースリリースを検証

 また、慣例にのっとれば、OPEC総会およびOPEC・非OPEC閣僚会議の後にメディア達の質疑応答を受ける記者会見が行われますが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、メディア達は総会の会場があるOPEC事務局の建物に入ることができない旨、事前に通達がありました。

 このため、今回の一連の会合で、OPECのウェブサイト上の3本のニュースリリースと、建物に出入りするタイミングで要人たちに行った各メディアの囲み取材で得られた情報が、主な情報となりました。

 3本のニュースリリースとは、いずれもOPEC総会が開催された3月5日付けで、内容は以下のとおりでした。(掲載された順)

[1]OPEC総会の開会宣言

[2]OPECプラス全体で日量150万バレルの追加削減をした上で、6月30日まで協調減産を延長することを翌6日の非OPECとの会合で協議すること

[3]協調減産の延長は6月30日までではなく2020年12月末まで、として非OPECと協議すること([2]の一部訂正)

 会合の結果は報じられているとおり、OPECと非OPECの協議は決裂し、減産の強化はおろか、延長すらできず、2017年1月にはじまり、何度も延長されながら続いてきた協調減産は、2020年3月31日をもって終了することとなりました。4年3カ月間続いた協調減産がいよいよ終わりを迎えることとなったわけです。

 2月のJTC直後に開催が提案された臨時総会の開催に対して難色を示し続けたため、3月の会合で協議が決裂する可能性はゼロではないと、各種報道でささやかれていました。それが現実のものとなったわけです。価格の下支えを失った原油相場は、OPEC総会の前日(3月4日)から3月9日にかけて30%程度下落しました。(47ドル近辺から32ドル近辺へ下落)

 以下は、OPECプラス内の、OPEC側のリーダー格のサウジアラビア、非OPEC側のリーダー格のロシアの財政収支と原油価格の推移です。

図:原油価格とサウジとロシアの貿易収支 ※貿易収支はともにドル換算

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)およびUNCTAD(国際連合貿易開発会議)のデータをもとに筆者作成

 サウジとロシアの貿易収支は、原油価格とほぼ連動しています。サウジとロシアの貿易はそれだけ、原油価格の変動に影響を受けていることがわかります。

 サウジとロシアの貿易収支の推移で異なるのは、変動幅です。2010年頃以降、サウジの貿易収支の方が、上下の変動幅が大きくなっていることがわかります。特に、逆オイルショック(2014年半ばから2016年後半にかけて起きた原油価格の急落・低迷)の際、サウジの貿易収支がロシアの貿易収支よりも、大きく落ち込んだことがわかります。

 近年のサウジとロシアにおいて、どちらが原油価格の下落時に大きくマイナスの影響を受けるのか? と問われれば、答えは“サウジ”なのだと思います。

 また、国の財政をまかなう上で必要な原油価格について、サウジは60ドル近辺、ロシアは40ドル近辺、という情報があります。(採掘コストではなく、国全体の収支をまかなう上で必要な原油価格)

 原油価格が30ドル台で推移している現状では、サウジは国自体が厳しい状況にある可能性がありますが、ロシアはなんとか耐えられる可能性があります。サウジがロシアよりも原油価格が下落した場合に不利であることを示した貿易収支の話と合致します。