寿命は延びている

篠田 岩城さんにお伺いしたいのですが、一般的に男性よりも寿命が長いといわれる女性は、資産形成をどのように考えればいいのでしょうか。

岩城 「私は長生きしないから」と言う方もいますが、それでも95歳まで、今20・30代の女性は100歳まで生きることを想定した方がいいでしょう。女性だからという特別な方法はありません。先ほどご紹介したように、毎月いくらまで取り崩せるのかという上限を把握し、それに公的年金を加えた金額の範囲内で楽しみながら生活をしていけばいいのです。

 人生には健康や人間関係といったお金の他にも気にかけることがたくさんあります。そこで、お金のことで必要以上に悩まずに、合理的、機械的に管理し、必要なところには気持ちよく使っていくことが大事です。

中野 女性の寿命が男性よりも長いことを逆手にとって、「女房は長生きするけれど、オレは早死にする」と言う男性がいます。ところが、実際に私の父は95歳で亡くなりました。75歳のころから「オレもそろそろ……」と言い続けて20年。

 男性も長生きすると意識を変えなければなりません。よく「長生きリスク」と言いますが、長く生きることは決して悪いことではありません。お金の不安、つまり、働けなくなって無収入になることをリスクと捉えるのなら、それを解消するための策が資産形成です。

篠田 資産形成の必要性について野尻さんはどうお考えですか。

野尻 国立社会保障・人口問題研究所によれば、2065年ごろには、総人口に占める65歳以上の比率が約4割になると推計されています。

超高齢化時代はすぐ、と野尻氏

 この比率の上昇は、高齢者の増加によるものと思われがちですが、実際には、15歳以上65歳未満の現役世代の減少によって、相対的な高齢比率の上昇がもたらされているのです。

 こうした事実を知っておけば、若い人たちほど「自分が65歳になったときに支えてくれる現役世代が減る」ことの意味が理解できるはずですし、自分で努力して資産形成するしかないことに気がつくと思います。

※1 金融庁が2019年6月3日に公表した金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」に記載された内容のこと。「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万~2,000万円になる」とある。

後編「自分で支える超高齢社会」に続く>>