資産形成は今からでも遅くない

篠田 お金の準備(資産形成)をしていなければ取り崩すこともできないわけですが、次は、長期分散投資と資産形成の重要性について考えていきたいと思います。中野さんは長年、長期分散投資の重要性を説いていますが、「もう年齢的に間に合わないのでは…」と不安に思っている人も多いように思われます。

中野 「長期分散投資と資産形成」は、世代を問わないムーブメントになりつつあります。資産形成とは将来の経済的不安を解消するための合理的な行動です。そして資産形成に長い時間をかければかけるほど、お金はしっかりと育っていきます。

 確かに、50代になってお金を無駄遣いしてきたことに気がついて不安になり「今からでも間に合うか?」と聞かれることがあります。年代を問わず気がついた時点から資産形成を始めればいいと思います。

 資産形成せよと言われても、衰退する日本経済に不安を抱いている人は多いでしょう。その不安を解消するために「お金を働きに出す」のなら、働き場所(長期資産運用)を日本経済ではなく、安定成長を続けている世界経済に求めるべき。人生100年時代の50歳は人生の折り返し点なので時間は十分にあります。まず行動ありき。考えている時間がもったいないと思います。

資産形成のはじめかた

岩城 退職一時金が預金口座に振り込まれると、金融機関の担当者からいろいろな商品を勧められますが、私はつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を使って投資信託を買うことをお勧めします。

 運用経験がない人ほど運用を怖がって、担当者が勧めるものを買ってしまいがち。でも運用で大事なことは、人気のある投信を買うのではなく、低コストの投信を使って国際分散投資をすることです。

「つみたてNISA」の非課税期間は最長20年なので、60歳で退職金を受け取ったら80歳まで続けられます。

中野 岩城さんのおっしゃるとおりで、「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」には、加入条件のほか、(拠出は)60歳までという年齢制限もありますが、「つみたてNISA」なら、20歳以上の方であれば原則どなたでも口座を開設できます。

篠田 野尻さんはつみたてNISAを使うことについて、どうお考えですか。

野尻 「つみたてNISA」を始めるのなら60代、70代と言わず、なるべく早く始めた方がいいと思います。先ほど取り崩しという話をしました。「つみたてNISA」のような非課税制度のメリットが生きるのは、取り崩すときです。

 取り崩す年代になるまでに資産を形成しておかなければならないのです。