●電力自由化、総仕上げへ。4月に発送電分離

 2020年4月から、発送電分離が実施されます。これが、20年以上かけて進められてきた「電力自由化」の総仕上げとなります。なんのことかわからない方のために、まず、電力自由化の全体像を解説しましょう。

 電力事業には、「発電事業」「送電事業」「配電事業」「電力小売り事業」の4つがあります。欧米では1980年代から電力自由化が進められてきましたが、日本では長年にわたり、電力事業は、10社の地域電力会社(北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄の10電力会社)によって独占されてきました。発電・送電・配電・小売りの4事業が、10の地域ごとに、地域独占会社によってすべて独占されていたわけです。

 電力供給の安定性を確保するために、独占によって電力会社の収益・財務を安定させることが優先されていたと言えます。確かに、日本の電力ネットワークは堅固で、欧米に比べると長期・大規模停電などの問題を起こしにくくなっています【注】。

【注】日本の電力ネットワークの安定性について
近年、設備の老朽化によって、電力ネットワークの安定性が損なわれる問題が増えています。たとえば、昨年は台風19号の被害によって千葉県で長期・大規模停電が起こりました。設備の老朽化などの問題が指摘されています。それでも、海外の電力ネットワークと比較すると、日本が安定性で優位なことは変わりません。

 一方、日本の電力料金が海外に比べて高止まりしていることが、日本の競争力をそいでいる面もあります。電力事業を自由化し、新規参入を増やすことで、電力料金の引き下げをはかる必要があると考えられてきました。

 そこで、以下の工程表で、電力自由化が進められてきました。4月に実施される「発送電分離」はその総仕上げとなります。

◆1995年12月:電気事業法改正、発電事業を自由化→発電事業へ新規参入促進
◆2000年3月:大口需要家向け、電力小売りを自由化→大口需要家向け電力料金の引き下げを促進
◆2016年4月:電力小売りを完全自由化→一般家庭向けの電力料金引き下げを促進
◆2020年4月:発送電分離