●送電・配電事業の将来像について(筆者私見)

 前述のとおり、新規参入を増やして競争を促進すべきは発電・電力小売りまでです。送電・配電事業は、逆に独占を進めた方が効率的です。現在、10の電力会社が地域ごとに分かれて送電・配電を行っていますが、全国で細切れに分かれたネットワークは非効率です。地域ごとの電力過不足を機動的に調整するためには、送配電事業は1社か2社に集約した方が良いと考えます。

 私は、東日本・送配電会社(仮称)と、西日本・送配電会社(仮称)の2社に集約するのが最も効率的と考えています。東西で周波数が異なるので、周波数の異なる2つの地域ごとに独占させる案です。

 送電・配電は、独占させるとともに、安価な料金で第三者に開放することを義務づける必要があります。電力供給の安定性を損なわないことが優先されるのは言うまでもありませんが、電力需給の安定性を損なうことが明らかでない限り、新規参入業者は自由に送配電網を借りられることが保証されるべきです。

 この考えは、我が国の通信ネットワークの維持管理システムを参考にしています。通信ネットワークと電力ネットワークでは、質的に異なる部分がありますが、1つ重要な共通点があります。全国細切れのネットワークでは効率が悪いことです。

 通信を利用するあらゆるビジネスにとって、網の目のように張り巡らされたNTTの短距離固定通信網が生命線となります。この短距離網(ラスト・ワンマイル)を利用しないことには、携帯電話サービスもいかなるインターネットサービスも成立しません。

 その短距離網は、NTT東日本とNTT西日本の2社に事実上、独占されています。短距離網の運営会社が、電力産業のように全国に10社もあったら、ネットワークの運営が極めて非効率になるからです。そうならないように、旧電電公社の分割民営化の際に、短距離網の運営は2社に集約しました。

 その代わり、単距離通信網を、第三者に開放する義務が課せられています。その上で、インターネットを利用したさまざまな成長企業が生まれています。

 以上、発送電分離について、解説しました。明日、これを踏まえて、電力株の投資判断について書きます。