今後に備えるスタンス

 リスク削減の第2段階の企業や機関の多くが、まだ目立った行動をとっていないと観測されることは留意されます。中国の春節後2週間は、新たな感染者、死亡者のニュースに市場は揺れ動かされます。市場には、下げ相場を見込んだ投機、先物などデリバティブ取引でヘッジする企業や機関の売りポジションも出てくるため、一時的に「リスクオフで円高」と株安が悪循環的に連鎖する場面もリスクとして排除できません。こうした事態が高じる場合は、ドル/円が105円かそれ以下をつっかける展開もありえます。ただし、投機の売りも半身で逃げ足が速いでしょう。こうした相場の振れに翻弄されることなく、(1)リスク削減、(2)流動性確保、(3)債権国・債務国間圧力を踏まえて冷静に情勢を読み解くことが肝要です。

 短期での悪いシナリオは、中国、そして日本を含む周辺アジアの景況感が悪化するばかりでなく、今ひとつ持ち直し力が弱い米景気サイクル終盤がこのままダレる展開でしょう。中期的にさらに悪いシナリオは、新型肺炎が沈静化に向かうことなく、6カ月、1年と続く事態でしょう。

 ただし、新型肺炎を抑え込もうと奮闘する中国、そして世界の医療関係者、政策当局者、地域の人々の力を信じ、今後3~6カ月以内に最悪状況を過ぎるという読みは、必ずしも希望的観測というばかりではありません。今回の新型肺炎の感染力は春以降に気温が上がれば落ちるのではないかという期待もあります。

 世界経済は深刻なダメージを免れれば、半導体サイクルの好転に沿った相場の反発がある程度はあろうとも想定しています。少なからぬ投資家の皆さんが、下落した市場には買い向かおうと考えているのではないでしょうか。先行きを見通すには不確実すぎる段階ですが、現時点では妥当な情勢判断と考えます。

【お知らせ】田中泰輔リサーチのウェブサイトを開設しました。