金(ゴールド):感染症は複数の上昇要因の一つに過ぎない。材料を俯瞰することが重要

“怖れる”ことと特に密接な関係があるのが金(ゴールド)です。世界的なリスクの高まり(≒有事の発生)の際は、“資金の逃避先”と目され、危機意識が高まる時に、金が物色されることがあります。

 機関投資家、個人投資家を問わず、危機意識の元となる“怖れ”は、反射的に金を物色させる“スイッチ”になっていると筆者は感じます。すべてではありませんが、一部で、その傾向があるように思います。テレビやインターネットでの報道に、政治不安をあおるようなシーンが増えると、“金”への関心が高まる傾向がありそうです。人類が金と出会って数千年の間、このようなことを繰り返しながら歴史を紡いできたため、有事=金、という回路が頭の中に存在するのかもしれません。

 現在進行中の新型肺炎の重大な懸念の中、筆者が申し上げたい事は、リスクが高まっているときほど、盲目的にならずに、状況を把握することに努めなければならないということです。

 投資という面で言えば“流れに乗る”ことが重要な場面がありますので、有事発生を機に、反射的に金を買うことが功を奏することもあります。しかし、このようなケースこそ、特に、一瞬でも金を取り巻く環境を俯瞰したほうが良いと感じます。

 感情の動きをきっかけに行った売買の結果が、良くても悪くても、その売買から得られる損得以外の結果については、たまたま、偶然の域を超えないと思います。

 同じ買うにしても、材料を一度でも俯瞰していれば、思惑と違う結果になったときでも、その理由に対する検証ができ、経験値となると思います。

 今は40年前と異なり、有事=金、という単純な方程式だけで、値動きを説明できる単純な環境ではありません。

 新型ウィルスに対し、正しい情報を収集して正しく対策をする“正しく怖れる”ことが必要な時だからこそ、“金投資において、“状況が悪いから、なんとなく金がよいのでは?”などと盲目的になるのではなく、有事は金の複数ある材料の一つにすぎないと認識した上で、有事以外の材料をできるだけ具体的にイメージするべきだと思います。それが、現在の金投資における“正しく怖れる”ことだと思います。このことは、今後金を投資対象にする上で重要なことだと筆者は考えています。

図:金を取り巻く環境(イメージ)

出所:筆者作成