新型肺炎鎮静化に向け、各国の本腰を入れた対応が始まる

 2月2日(日)、中国人民銀行が1兆2,000億元を金融市場に投入すると発表しました。実施は春節明けの本日2月3日(月)で、新型肺炎拡大の影響で中国国内経済が打撃を受ける中、金融市場に資金を供給する形で国内企業を支援する目的があると見られます。

 また、1月30日(木)、新型肺炎の拡大に対し、WHO(世界保健機関)が“緊急事態宣言”を発令しました。日本では、翌31日(金)に新型肺炎による感染症を“指定感染症”とする政令が施行されることが決まり、2月1日(土)より施行されました。

 これらの対応は、世界全体が強く懸念する新型肺炎に対し、これ以上の拡大を防ぐことに本腰が入ったことを意味します。

 しかし、原因が新型肺炎だったこと、起源が動物とみられること、症状が肺炎であること、発生地が中国であること、拡大時期が同じであることなど、複数の共通点を持つSARS(重症急性呼吸器症候群)は、流行が終息までおよそ8カ月(2002年11月16日から2003年7月5日)かかったことから、今回の感染症が終息するのが今年の夏になるとの指摘もあります。

 今月に入り、中国国外で同感染症による初めての死者が出たとの報道もあり、まだしばらくは感染が拡大する可能性があることから、感染拡大を軽減しながら、忍耐強く終息を待つことが求められます。

 忍耐強く終息を待つにあたり必要なことは“正しく怖れる”ことだと筆者は考えています。今まさに新型肺炎と対峙している人類にとって、いたずらに懸念を拡大させないために必要な考え方だと思います。

 確かに、新型肺炎に関わる環境は悪く、中国の景気が減速することは避けられず、それによる周辺国、貿易相手国へのマイナスの影響も不可避だと思います。しかし、だからといって、不安や心配が必要以上に膨れ上がっては、事態がさらに悪化しかねません。

 半年から1年先の景気動向への思惑(期待や懸念)を織り込む傾向がある株式市場、足元の需給データの他、将来の消費や生産の予想に対する思惑を織り込む傾向がある商品(コモディティ)市場、それらの影響を変動要因の一つとしながら動く通貨市場、いずれも、“思惑”が絡んでいるわけです。

 IMF(国際通貨基金)が「今回の感染症の拡大が世界経済の成長率を押し下げる」との見通しを示しましたが、仮に実際にそうであったとしても、過度な悲観論は過度に相場を押し下げるだけです。事態を冷静に受け止めて冷静に判断することが、過度な相場の下落を防ぐ最も有効な手段になると筆者は考えています。そのためには、“ざっくりと”悪くなる、“漠然と”消費が減る…などではなく、具体的に「どの分野」で「何が起きそうか」を予想し、事態を正しく知ることが必要です。

 以下、新型肺炎拡大が投資市場委及ぼす影響について、具体的に検証していきます。