経済悲惨度指数の低下と株高はトランプ再選の追い風

 トランプ大統領の再選予想確率が上昇しているのは、「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に恵まれているから」との見方があります。図表3は、過去50年における米国の「経済悲惨度指数」と株価(S&P500指数)の推移を示したものです。

 経済悲惨度指数(Economic Misery Index)とは、経済学者であるアーサー・オークン氏が考案したもので、失業率とインフレ率の絶対値を足した指数です。「所得格差の問題」は別にして、経済悲惨度指数の低下は与党政権に追い風とされます。逆に、高い失業率とインフレ高進が共存するスタグフレーション色の強い(不況期に物価が上昇する)局面では、米国民(有権者)は生活苦や不満を感じやすくなります。大統領選挙年に経済悲惨度指数が上昇する(高水準で推移する)と現職の大統領(現在は共和党政権)に不利と言われてきました。

 実際、過去50年の間に「再選に失敗した大統領」は、1980年のカーター大統領と1992年のブッシュ(父)大統領のみで、どちらも経済悲惨度指数が10以上に上昇して高水準だったことが分かります。

図表3:米国の経済悲惨度指数と株価の長期推移

出所:Bloombergをもとに楽天証券経済研究所作成(1970/1~2019/12)

 トランプ大統領の功績か否かは別にして、米国の経済悲惨度指数は5.1(=失業率3.5%+PCEコア物価上昇率1.6%)と過去50年で最も低い水準(低失業率で低インフレ)で、こうした経済環境が米国株高を支えているとも言えます(図表3)。

 経済の定量的側面では「トランプ大統領再選」に有利な環境と言えそうです。ただ、選挙民の支持は定性的な「感性や好み」で左右される場合もあります。かつて米大統領に求められてきた「高潔さ」、「道徳心」、「倫理観」、「上品さ」、「公正さ」の面では、トランプ大統領の再選に疑問符が付いているからです。

 今週は上院議会で大統領弾劾裁判(審議)がスタートしました。共和党が過半を占める上院議会で否決される可能性が高い弾劾発議に踏み切った下院・民主党の攻勢と証人喚問の行方が注目されています。また、2月3日のアイオワ州党員集会でスタートする民主党の大統領候補者選定の動きも要注目です。株式市場のメインシナリオとされる「トランプ大統領再選」を揺るがすニュース・フローが増えると、米国株やドルは下落しやすくなります。

 新型肺炎の流行不安だけでなく、ワシントン情勢を巡る不確実性が高まると、これまで安定していたボラティリティ(変動率)見通しが高まり株価が乱高下する可能性があり注意が必要です。

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