中国が合意を遵守するのは、かなり困難

 1つ重大な問題があります。中国は合意を守れるのでしょうか? 一番心配なのは、米国からの輸入を2,000億ドル増やす約束です。世界各国から輸入を合わせて2,000億ドル増やすのならば、やりようはあるかもしれません。米国だけから輸入を増やすのは、かなり困難です。国家主導の管理貿易を実施し、中国の民間企業の自由を奪い、強制的に米国から輸入を増やさせない限り、実現しません。

 特定の国から輸入を大幅に増やすことがいかに困難か、たとえ話で説明します。
 日本が、米国から自動車輸入を増やすことを約束させられました。輸入車を増やす政策をとり、輸入車を強引に増やそうとします。ただし、どこの国から輸入が増えるでしょうか?
 日本で人気のドイツ車の輸入が増えるでしょう。また、日本メーカーが海外で生産する日本車の逆輸入も増えるかもしれません。ディーラー網が十分に整備されていない米国車の販売だけ日本で急激に伸ばそうとしても、簡単には実現しません。

 国家主導の管理貿易でないと実現できない要求を他国に押しつけることは、理不尽と言えます。米国からの輸入を増やしつつ、それ以外の国からの輸入が増えないような複雑な管理貿易をやらない限り、実現できない要求だからです。このような要求は、自由経済を前提としている欧州や日本は、絶対に受け入れないと思います。それでも、中国がその要求を呑んだのは、中国がこれまで、計画経済で国の意思で経済を管理してきたからだと思います。