一方的に米国優位だった「第1段階合意」

 先週15日に正式に成立した米中「第1段階合意」内容は、昨年12月15日に米中で合意した内容から大きくかけ離れてはいませんでした。その意味では、サプライズ(驚き)はありません。

 それでも、1つ、サプライズがあります。かなり一方的に米国優位の内容にもかかわらず、中国が合意して署名したことです。今回の合意で、中国は、米国からの輸入を今後2年間で2,000億ドル(約22兆円)も増やすことを約束させられました。その他にも、たくさんの約束【注】を、させられています。

【注】第1段階の合意に盛り込まれた中国が遵守すべき7項目
(1)米国からの輸入を今後2年で2,000億ドル増やすこと
(2)外資系企業に対する技術移転強要の禁止
(3)知的財産権の保護
(4)為替操作の禁止
(5)金融サービスの対外開放
(6)農産品輸入の非関税障壁撤廃
(7)履行検証。合意内容が遵守されているか検証し、遵守されていなければ米国が一方的に罰則を課せる仕組みを導入

 これに対し、米国が中国に約束したのは、制裁関税の一部税率をほんの少し引き下げることだけ。昨年9月に発動した制裁関税第4弾(中国からの輸入1,200億ドル相当にかけた15%)の関税率を7.5%にします。ただし、それ以前に発動していた制裁関税第1~3弾(合わせて中国からの輸入2,500億ドル相当にかけた25%)は、そのまま維持されます。

 トランプ大統領は、交渉の成果を強くアピールしました。これだけ一方的に米国に有利な内容を中国に呑ませたわけですから、当然かと思います。

 それだけ、中国景気が悪化し、中国側が追い詰められていたということが分かります。米中貿易戦争のマイナス影響は、中国に重く、米国に軽微であることが、これまで分かっていました。そのため米国優位に交渉が進みました。