英与党圧勝だが来年末に向け政治リスク再燃も

 もう一つの政治リスクであった英総選挙は、事前予想に反し、保守党圧勝の結果でした。

 事前予想では「保守党と労働党との差が縮まっている」でしたが、選挙が始まってすぐの出口調査で「保守党圧勝、労働党惨敗」の予測が出るとポンドは急騰。ポンド/円で見ると、12日は144円近辺で終わりましたが、13日の東京時間朝7時過ぎに147円近辺でギャップオープン(ものすごいギャップ)し、148円手前まで急騰しました。このポンド/円の急騰はさすがにドル/円にも影響し、ドル/円を109.70円近辺まで押し上げました。

 しかし、" Buy the rumor, Sell the fact "(「噂で買って、事実で売る」)という格言の通り、議席数が確定する前に、その日のうちに145円台半ばまでポンド/円は売られました。前日の終値から4円上昇し、2円50銭下落しました。

 しかし、ポンドが売られたのはどうやら利食いだけではなさそうです。

 選挙後のEUの厳しい反応からEUとの貿易交渉が難航し、移行期間の期限である2020年12月末までにまとまらないのではないかという懸念が、ポンド売りを誘発させている可能性があります。今週に入ってポンド/円はギャップを埋め、ついに12日の終値144円近辺を割り込んでしまいました。

 ジョンソン英首相はEUとの交渉期限を延長しないと公約していますが、もし、期限までにまとまらない場合は「合意なき離脱」と似たような事態になる恐れがあります。

 移行期間は2022年まで延長することが可能ですが、もし、延長するのであれば2020年6月末までにその手続きをしなければなりません。しかし、ジョンソン首相は交渉延長をしないという公約を守るために移行期間の延長を法律で禁じる方針を固めました。

 ジョンソン首相の思惑通り、2020年12月末までにEUとの自由貿易協定が締結できるのか、あるいはEUの「いいとこ取りは許さない」という厳しい抵抗にあい、公約を破棄せざるを得ない状況に追い込まれるのかどうかに今後は注目です。年末に向けて政治リスクが再燃するかもしれません。