一筋縄ではない景気楽観見通し
好調な米雇用統計、史上最高圏の株、米中通商協議と英EU離脱問題の進展を受けて、2020年の景気について楽観論が浮上してきていますが、どうやら一筋縄ではいかないかもしれません。2020年前半もこれらの動向を注視しながら、相場が動きそうです。2020年前半の注目ポイントを次にまとめます。
(1)米中通商協議の進展度合い
・第1段階の合意文書署名時期
遅くなればなるほど景気に悪影響
・中国の農産物輸入規模と時期
規模と時期は米大統領選挙に影響、不満であればトランプ大統領は再び強硬姿勢に
・残りの関税の段階的引き下げの進捗状況
中国が主張する第1段階の合意の話なのか、米国が意図する第2段階の交渉次第なのか、決着していなければ署名時期の遅延や今後の火種になる可能性も
(2)英EU離脱問題→離脱へのスケジュールが確定したが、手続き的に非現実的との声も
・2020年1月末の離脱、移行期間に入り12月末までEUと自由貿易協定を締結し完全に離脱
・移行期間は2022年12月末まで延長可能、その場合2020年6月末までに手続きが必要
ジョンソン首相は移行期間の延長を法律で禁じる方針を固めたが、期間内に自由貿易協定が合意できなければ経済的混乱が生じる恐れがあり、英国やEUだけでなく世界経済への影響も
(3)景気動向とFRB(米連邦準備制度理事会)の金融姿勢
・中国とドイツに景気回復の兆しが見え始めているが、(1)と(2)が影響し、楽観的な景気回復期待に水をさすかどうか
・FRBは、来年は利下げも利上げもしないという姿勢。景気や物価動向次第でそのスタンスが変わるのかどうか
そして、2020年は米大統領選挙が最大のイベントとなります。好調な米景気、株は史上最高の高値圏、部分的とはいえ米中合意と、選挙レースでトランプ優勢の風が年末に吹きましたが、選挙戦でトランプ氏が苦戦を強いられた場合、中国に対して強硬姿勢に転じたり、FRBに対して利下げ圧力を強めたりする可能性も予想されるため注意が必要です。
とりあえずは年内、このまま楽観ムードで終わりそうですが、マーケットは年が明けるとガラッと変わる時があります。その時に備え、楽観ムードの時にこそ、2020年のシナリオを練っておくことが重要です。