「価値」の納得的な分配比率は?

 先に進もう。ここで、顧客側から見て納得性のある「価値」が確定できたと仮定しよう。例えば、一年分の効用改善幅がアドバイスの「価値」として妥当だとアドバイスの出し手と受け手の双方が納得して合意できたとしよう。 

 では、アドバイスに対する「報酬」は「価値」に対して、いくらが妥当なのだろうか。 

 多分、これは、机の前に座って考えて分かる問題ではなく、双方の感情や、社会的な環境、さらにはアドバイスビジネスの競争関係、顧客が置かれた立場、などによって変わる問題なのだろう。 

 例えば、大手の広告代理店の手数料や、講演などのキャスティングのような、日本における「口利き」の標準的な手数料は、「代金の3割」くらいだから、アドバイスの適正報酬として、そのくらいの金額を請求してみるといいのだろうか。 

 残念ながら、筆者の力が及ばず、本稿ではアドバイスの適正報酬の決定方法を示すことができなかったが、アドバイスの「価値」を顧客に示す方法の方向性を示すことがある程度できたと思う。 

 実は、筆者がこの問題を考えてみようと思った理由は、FPのようなアドバイザーが、アドバイスの価値を顧客に提示して、リーズナブルな報酬を得るための適切な根拠を考えたかったからだ。

「効用」まで踏み込んで考えていいのだと思うが、その手前であっても、顧客のポートフォリオの「価値」をどれだけ改善したのかについて、アドバイザーは数量化できた方がいいし(そうでなければ、適切な運用アドバイスができないだろうし)、顧客にアドバイスの「価値」を提示して、十分なアドバイス料を堂々と受け取るといいと思う。 

 真に優れたアドバイザーは、「時間売り」の料金設定ではもったいない。