アドバイスの「有効期間」をどう考えるか

 アドバイスの受け手の効用関数を推定して、アドバイス前後の効用の改善幅に運用資産額と期間を掛けたものが、顧客にとってのアドバイスの「価値」だと一応は考えられよう。 

 ただし、これはアドバイスの「価値」に過ぎないのであって、筆者は、もう一歩先のアドバイスへの適正報酬を知りたい。効用の改善幅で見たアドバイスの「価値」は、そのアドバイスに対して、「これ以上報酬を払うと顧客の効用がマイナスになってしまう」という報酬の「上限」を示すに過ぎない。「価値」に対する「報酬」の適性比率の決定方法という大きな問題が残る。

 また、別の問題として、アドバイスの「価値」を、リスクゼロ等価の年率リターンで表現された「効用の改善幅」に「運用資産額」を掛けて考えることができるとしても、アドバイスの有効期間を決めなければ、アドバイスの「価値」を確定できないという問題がある。 

 率直に言うと、アドバイスによって改善されたポートフォリオは、何年間もほぼそのままで有効な「価値」を持つ。適切な運用アドバイスとは、おおむねそのようなものだ。しかし、顧客の側では、一回のアドバイスで何年分にも相当する「価値」に連動したフィーを支払うことに納得するものだろうか。

 こうした事情を考えると、資産を預かって「残高×時間」に比例するフィーを取るビジネスや、期間を定めたコンサルティングのビジネスは報酬設定が「分かりやすい」。 

 他方で、アドバイス自体は正しいことを一回教えてあげるだけなので、何年分もの「価値」に連動したフィーを貰うのはいかがなものか、という感情もが湧いてくることも禁じ得ない。正直に言うなら、お金のアドバイスにあっては、たいていの場合、正しい本を読んで、良く考えたら分かる程度の簡単なことを教えるだけなのだ。