11月に注目したい新興株の動き

 マザーズの地合いが悪いため、日経平均がいくら上がろうが個人投資家のテンションは上がってきません。日経平均と比べて、今のマザーズがどれほど弱いのか…日経平均株価(N)をマザーズ指数(M)で割ったNM倍率を計算してみると見えてきます(NM倍率上昇=「マザーズの方が弱い」、NM倍率低下=「マザーズの方が強い」)。

 10月末時点のNM倍率は26.2倍です。アベノミクス相場以降(2013年~)でさかのぼって計算したところ、先月17日に付けた26.9倍が最高値。つまり、マザーズ指数は、対日経平均で“今が最弱”ということになります。ちなみに、NM倍率の最低値は2016年5月19日の13.4倍。ここから3年5カ月程度、ほぼ一貫してNM倍率は上昇しています(日経平均より「マザーズの方が弱い」)。

 流動性の低下も続いているし、マザーズ市場そのものが衰退しているような印象もあると思います。基準をクリアした企業が、東証1部に昇格して去っていく市場でもありますし…。ただ、実際は、新規で加わる企業数の方がはるかに多く、マザーズ市場自体は拡大しています。

 というのも、10月末時点でマザーズの上場銘柄数はちょうど300銘柄になりました。アベノミクス相場が始まった2013年の年初は183銘柄。本来であれば、もっと活気付いておかしくなかったわけです。この切り口でいえば、IPO銘柄がマザーズ市場衰退の一因になっていると分析できます。

 感覚的な話になってしまいますが、公開価格の設定が高いIPO銘柄が増え過ぎているように思います。公開価格が高いため、初値を付けた後の値持ちが悪く、セカンダリーの値動きが悪いというイメージが浸透します。そこで初値買いを控える投資家が増え、初値すら公開価格を下回る事例が出てきます。

 9月、10月でマザーズに11銘柄がIPOしましたが、そのうち3銘柄の初値が公開価格を割れました(もはや「IPO株に当選すれば常勝!」と呼べるような勝率ではないですね)。

 需給ギャップで初値が高く付いた銘柄も、流動性が急激に落ちた「上場翌月の月末」タイミングでマザーズ指数の構成銘柄になります。理解に苦しむ割高な株価で、かつ流動性が急激に落ちた状態で指数に入るわけですから、ほとんどがマザーズ指数の上値を抑える要因になるわけです。

 そして、上場から半年経過するとロックアップが解除され、問答無用で出てくるベンチャーキャピタルの利益確定売りが株価押し下げ要因になる…その繰り返しで、本来なら市場を活性化させるIPOが、市場拡大を阻害しているようにも感じます。

 そういう意味では、11月は21日までIPOが無い空白期間になることは安心材料かもしれません。また、決算発表集中日(14日)を通過した15日以降は、マザーズ銘柄の決算発表も空白期間になります。

 東証1部の主力銘柄であれば、決算が少々悪くても、自社株買いなど株主還元策を出せばOK的なところもありますが、マザーズ銘柄にはそれもない…決算発表シーズンは基本的に“鬼門”でしかありません。

 今月に関しては、前述の理由から「月後半」辺りからの地合い改善に期待してみたいところ。過去10年でも、11月の東証マザーズ指数の月間パフォーマンス平均は「+3.3%」と好成績が残っています。昨年もマザーズ指数の月間パフォーマンスが最良だったのは11月の+11.4%でした。

 特に月後半から、来月12月下旬にかけて、9月末に権利確定された3月決算企業の中間配当の振込みが始まります。中間配当を受け取った中小型ファンドなどが、配当分を再投資します。これが年末にかけた新興株ラリーの背景です。

 純資産総額で100億円以上あるような小型株グロースを対象とするファンドのポートフォリオを調べ(各ファンドの「月次レポート」で確認できます)、何を保有しているかを探ってみてもいいかもしれません。ちなみに、有名な中小型ファンドをいくつか調べてみたところ、マザーズ銘柄でいえばSHIFTやUUUMを組入れ上位にしているファンドがありました…といった具合に。