裁定残を見ながらトレーディングする際の注意事項

 裁定買い残はかなり低い水準まで減少しましたが、裁定残だけで投資判断すべきではありません。裁定残がいくらまで減ったら増加に転じるという明確な法則はないからです。その時々で、裁定残が底を打つ水準は異なります。

 短期筋の買いポジションがほとんど整理されていることを意識しつつ、ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の変化も見ながら、日経平均が上昇トレンドに入る時期を探っていくことになります。

 株の動く方向を決める一番大切な要素は、ファンダメンタルズです。投機筋のポジションだけでは決まりません。ファンダメンタルズの変化を見つつ、外国人が日本株を見る目が変わるタイミングをはかっていく必要があります。

裁定買い残が3.5兆~4兆円まで増加すると、減少に転じることが多い

 2007年以降で見ると、裁定買い残が3.5兆~4兆円まで増加した後、日経平均は反落局面に入っていました。裁定買い残3.5兆~4兆円は、投機筋の先物買い建てが高水準になっていることを示し、短期的な「買われ過ぎ」を警戒した方が良いレベルです。

<日経平均と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2019年10月15日(裁定買い残は2019年10月4日まで)>

注:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 ただし、今は、裁定買い残高が低すぎる状態です。短期的需給シグナルとして見ると、日経平均は「売られ過ぎ」と判断できます。需給指標だけで、将来の日経平均の方向が決まるわけではありません。

 ただし、私は今が2019年の世界景気悪化を織り込む最終局面で、2020年には世界景気は回復に向かうと予想しています。私の予想が正しいとすると、日経平均先物には、年末にかけて外国人の買い戻しが入っていくことになります。そうなれば、後から振り返って、「裁定買い残5,000億円」は買いシグナルだったということになります。

 私の予想通りになるか否か、今後のファンダメンタルズの変化を注視していきたいと思います。

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