9月の市場では、米国でも日本でも株価、長期金利が小反発し、ドル/円も108円台へ失地回復に向かいました。下げ相場で沈んでいた金融業界の専門家たちからは元気な声が出始めました。相場自体の上昇、強気予想など「市場の声」に、投資家は安堵(あんど)し、元気づけられるでしょう。しかし、「市場の声」には特有の癖があります。その裏を読み解き、相場の現状と展望を考えます。

「市場の声」解読術の効用

 先進国では年間、マクロ経済の変化が数%でも、金融マネーのダイナミックな動きによって、株式や為替の相場は10~20%は変動します。

 これに対して、投機がうごめく短期相場では、ドル/円が1日に1~2%動くことは珍しくありません。そうかといって、1年間250営業日で250%動くことはほぼ起こることはなく、1年を通せば10~20%の変動に収まります。しかし問題は、短期相場が数日で3%、5%、10%と動くとき、「市場の声」が錯綜(さくそう)し、多くの市場参加者が翻弄(ほんろう)されやすいことです。

 長期投資家の多くは、短期の変動は気にしていないと言うかもしれませんが、彼らも市場で取引を実行するときは、必ず短期相場に参入することになります。「市場の声」を適切に解読することは、無用な相場のかく乱に惑わされないため、さらに積極的には、短期相場の中でより有利な機会をつかむために、不可欠です。

 そのため今回は、日々の相場変動の裏側で何が起こり、どのような情報が出回るのかについて解説します。これを頭の片隅に入れるだけで、相場の値動き、市況報道や専門家の話などの情報を見る目が変わるはずです。