9月に注目したい新興株の動き

 8月に崩れた新興株。この影響が尾を引き、個人投資家の損益状況が悪化しています。8月末時点の二市場の信用評価損益率は、今年では最低圏の▲15.93%(最低は1月11日時点の▲16.21%)。この分には東証1部銘柄も含みますので、新興株に限った損益率はもっと悪いのでしょう(アンジェス株急落などの影響大)。

 新興株ラリーの発生を予想する楽観論は消えているように思います。なぜなら、新興株の地合いが短期間でも本格的に良いといえる時期が無いから。信用評価損益率でいえば、昨年は最良値で▲3.6%がありますが、今年は最良値でも▲12.96%(4月5日時点)。

 また、米中摩擦など日本の新興株に直接関係の無い事象に翻弄され、業績好調銘柄が少なく(むしろ失望銘柄多数)、それでいてマザーズ指数の予想PERは8月末時点で188倍(時価総額上位に赤字企業が多くなり過ぎたため)。すぐに解決されるような問題でもなく、株価が下がったからそろそろいいのでは?と気安く言えるような根拠はありません。

 とはいえ、センチメントひとつで短期的には地合いが一変するのもマザーズ市場。なんらかの材料を理由にバイオ株が上がり、何の関係もないネット関連株にも波及し、新興株全体が一時的に息を吹き返す(8月のアンジェスショックの逆)こともよくあることです。例えば、19日以降にマザーズやジャスダックのIPO(新規公開株式)が再開します。こういうことが反転のきっかけになることもあります。

 新興株の雰囲気の変化、このサインとして見るべきポイントは、チャートではなく売買のボリュームが適切かと思います。9月4日のマザーズの売買代金517億円が今年最低でした。これ、16年11月14日以来の低水準です。この流動性の低下は、今だけというより趨勢です。

 先月8月22日に東証マザーズの売買代金25日移動平均値が800億円を下回り、今なお続いています。25日移動平均値で800億円割れが10営業日以上続いたのは、「15年9月/16年8月/16年10月」の3回。

 いずれも、地合い悪化後のもみ合い局面で、雰囲気も時期も今と似ています。その後、売買代金が増え始め、25日移動平均値で1,500億~2000億円へと膨らむ過程でマザーズ指数も急上昇しました。

 個人の信用取引が多く、空売りが極めて少なく、先物の影響が極めて小さい新興株は「買戻し」で上がることはありません(これが東証1部との違い)。売買が増えているということは、そのまま「買いが増えている」ということ。「理由なんて何でもいいから売買増えて!」これに尽きるのではないでしょうか。