プラチナ価格は歴史的な底値圏で推移中。VW問題は風評被害の可能性あり!?
プラチナと金の価格差について触れましたが、ここからはプラチナ単体について書きます。以下の図はドル建てプラチナの価格推移を示しています。
図:ドル建てプラチナ価格 (期近、月足、終値)
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プラチナ価格はリーマン・ショック直後の安値水準で底堅く推移していることが分かります。1トロイオンスあたり、850ドル近辺で推移しています。
歴史的な安値水準で底堅く推移する動きは、円建てのプラチナでも同じです。このおよそ1年間、リーマン・ショック直後の安値を下回ることなく、1グラムあたり2,600円から3,000円近辺で底堅く推移しています。
国内外のプラチナ価格が底堅く推移している背景について、1つの仮説を述べます。欧州の乗用車登録台数における、ディーゼル車とガソリン車の台数とシェアを確認します。
プラチナは主に、ディーゼル車に設置される排ガス浄化装置に、排ガスを浄化するための触媒として用いられています。「環境意識が高まったらプラチナ価格が急騰、なぜ?!」をご参照ください。
中でも欧州は、プラチナを自動車の排ガス浄化装置の触媒に用いる主要な地域で、この欧州の排ガス浄化装置向けの消費の増減が、プラチナの消費全体の増減に影響を与えます。近年、欧州の排ガス浄化装置向けの消費量はプラチナ消費全体の15%~20%とみられます。
以下は、欧州の乗用車登録台数におけるディーゼル車とガソリン車の台数とシェアを示したものです。
図:欧州の乗用車登録台数におけるディーゼル車とガソリン車の台数(左)とシェア(右)
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右のシェアの図からわかるように、欧州のディーゼル車シェアは、このおよそ10年間の最低を更新しながら低下しています。
2015年9月、フォルクスワーゲン問題(世界最大規模のドイツの自動車会社、フォルクスワーゲン社が、自社と関連会社で取り扱う自動車のエンジンに違法な装置を取り付け、排ガス規制を逃れていた問題)が発覚しました。
その後、同社のディーゼル車の生産が落ち込み、プラチナの消費が減少し、プラチナ価格が下落する、という連想が強まりました。実際に、プラチナ価格は下落しました。
しかし、上記左の“台数”は、シェアほど大きくは低下していません。むしろ2017年は、2013年や2014年などの欧州の信用不安が強まった時期よりも、多いことが分かります。減少は減少でも、シェアほどの温度感で減少しているとは言えません。
シェア低下と台数減少は必ずしも同じではありません。ディーゼル車のシェアは、ディーゼル車の台数がさほど変わらなくても、ガソリン車の台数が増加すれば、低下します。
これに関連し、欧州の排ガス浄化装置向けプラチナ消費量の推移を示すデータがあります。
図:欧州の排ガス浄化装置向けプラチナ消費量
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フォルクスワーゲン問題が発覚した2015年の欧州の排ガス浄化装置向けプラチナ消費量は43.8トンでした、そして、2016年は増加、2017年は43.8トンと2015年と同じ、2018年はやや減少となっています。
プラチナの消費に直接的に関わるのは、シェアではなく台数です。シェアが急低下したからといって、台数やプラチナの消費量が急減しているわけではありません。
フォルクスワーゲン問題発覚後、ディーゼル車のシェア低下が報じられ、それがディーゼル車生産台数の減少とプラチナの消費減少を“連想させ”、プラチナ価格が下落する場面がありました。これを“風評被害”という専門家がいますが、わたしもそうだと思います。
同問題発覚後、プラチナ価格は、一時的に下落したものの、過剰な懸念が一巡したことが主因となり、現在、底堅く推移しているのだと筆者は考えています。
価格差を議論する際は、もとになる2つの市場それぞれの動向に注目する必要があること、そして欧州の排ガス触媒向けプラチナ消費量については、同地域のディーゼル車のシェアではなく、台数に着目することが重要であることを述べました。