「イラン」「ベネズエラ」の原油生産量は、米国の制裁による“生産減少”

 先述のとおり、減産免除国3つあります。「イラン」「ベネズエラ」「リビア」です。

 OPEC加盟国である「イラン」「ベネズエラ」「リビア」は減産免除国です。特に「イラン」と「ベネズエラ」は、米国の制裁の対象となり、制裁がこれらの国の原油生産量を大きく減少させる要因になっています。

 イランは、米国が同盟国にイラン産原油の不買を呼びかけた(イラン産原油の購入を制裁対象とした)ことにより、イランの原油生産量が大きく減少しています。

 また、ベネズエラも米国の制裁で、ベネズエラ産原油の商用化の際に希釈剤として用いてきた米国産の石油製品が入手できなくなるなど、ベネズエラ国営石油会社の運営がままならない状況に陥り、原油生産量の減少に歯止めがかかっていません。

 リビアは、アラブの春の際、政情不安で原油生産量が一時的に急減したものの、近年は徐々に回復傾向にあります。

 以下は減産免除国3カ国、それぞれの原油生産量の推移です。

図7:減産免除国3カ国それぞれの原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

 以下は減産免除国3カ国の原油生産量の合計です。

図8:減産免除国の原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

 先述のとおり、減産免除国3カ国の2019年7月の原油生産量は、1月に比べて日量81万バレル減少しました。ただ、この81万バレルの減少は、2017年半ばから始まっていた減少傾向の延長線上にあり、2019年1月からの現在のルールの減産開始とは、大きな関わりはないとみられます。

 また、リビアを除くイランとベネズエラの2カ国の生産量の合計は、2016年半ば頃から減少し続けています。つまり、この2カ国の原油生産量は、現在のルールの減産にも2017年1月から始まった協調減産にも、いずれにも大きな関わりがなく減少し続けていると言えます。

 減産免除国の原油生産量はいくら減少しても、減産順守率を上昇させることはありません。減産免除国の原油生産量の減少は、OPEC全体の原油生産量を減少させる要因にはなったとしても、減産順守と関わりがないことを認識することが必要です。

 特に現在のように、減産参加国の中でサウジ1国のみが減産に貢献し、他の減産参加国が減産に消極的な状況において、減産免除国の生産減少(意図して生産量が減少している訳ではないので“減産”とは言わない)が、減産順守に貢献しているように見えてしまう状況においては、OPEC全体における原油産量を、減産参加国によるもの、減産免除国によるもの、とに明確に分けて認識することが、正しく減産を評価するために必要不可欠です。