孤軍奮闘するリーダー「サウジ」の原油生産量は協調減産開始後の最低まで減少中

 以下の図は、先ほどのOPECプラスの全体像の図に、減産のルールが変わった2019年1月から7月までの、OPECの原油生産量の傾向を追記したものです。

図3:OPECの原油生産量の傾向(2019年1~7月まで)

出所:各種資料をもとに筆者作成

 OPECの原油生産量は7月、前月比で“減少”したわけですが、その日量28万バレルの減少を含んだ、上図から分かる2019年1~7月までの動向をまとめると以下のようになります。

  • 減産参加国のサウジは減産に積極的。減少傾向が続いている。
  • サウジ以外の減産参加国は減産に消極的。生産量は横ばい。
  • 減産免除国のイランとベネズエラの原油生産量は減産と関係なく減少中。
  • 減産免除国のリビアの原油生産量は回復中。

 これらの動向をグラフにすると、以下のようになります。

図4:減産参加国・減産免除国別のOPECの原油生産動向(2019年1月と7月を比較)

目盛の単位:百万バレル
出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

 削減量のルールが変わった2019年1月と先月7月を比べると、OPEC全体では日量156万バレル、生産量が減少しています。156万バレルの内訳は、減産参加国が48.1%にあたる75万バレル減、減産免除国が51.9%にあたる81万バレル減です。

 つまり、1~7月までの減少分の半分以上は、減産評価の対象外である“減産免除国”によるものです。減産実施国の減産実施よりも、減産免除国の生産減少の方が大きく貢献しているわけです。

 また、減産参加国の中でもサウジは60万バレルもの減産をしていますが、この量はOPEC14カ国全体の38.4%、減産参加国11カ国全体の79.8%です。ここに、サウジの孤軍奮闘ぶりがうかがえます。OPECプラス24カ国のうち、OPEC側のリーダーとして、サウジは孤軍奮闘し、減産を行っているわけです。

図5:サウジの原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

 また、以下は減産参加国11カ国のうち、サウジを除いた10カ国の原油生産量の推移です。

図6:サウジを除く減産参加国(合計10カ国)の原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

 サウジを除いた10カ国の減産参加国は15万バレルの減産をしています。この量はOPEC14カ国全体の9.7%、減産参加国11カ国全体の20.2%です。次回以降本欄で詳細を書きますが、サウジ以外の減産参加国の一部では増産をしている国があります。

 本来減産をしなくてはならない国が増産を行っているため、サウジが孤軍奮闘せざるを得ない状況になっていると言えます。