リブラの生い立ちを元に、金(ゴールド)相場の長期的な方向性を考える

 リブラの生い立ちを筆者なりに考えてきましたが、その際、やはり外せないのが資本主義というキーワードでした。資本主義が金(ゴールド)に与えた影響を考えてみます。

 図:資本主義と金(ゴールド)の関係

出所:筆者作成

 資本主義が近現代社会全体を変えてきたとすれば、資本主義は金の存在意義を変えてきたといえます。第2次世界大戦前にドルの裏付けにして世界のお金として目覚めさせ、ブレトンウッズ体制の崩壊でドルから金を自由にしました。そして現在、再び世界のお金として見直すきっかけを作っているといえます。

 例えば、以下は、数の多さでは分からない物事の温度感の変化についての筆者の考えを示したものです。新しいものの誕生や新しいものに順応しようとするムードが強まれば強まるほど、返って古いものに回帰して強固な層を作る(原点回帰によってコア層ができる)、という例です。

 図:原点回帰によって生まれたコア層(例)

出所:筆者作成

 小売店で現金以外の決済手段が広がれば広がるほど、強く現金主義を貫く層が出現する、トランプ大統領を支持しない人が多数となればなるほど、かえって既存の支持者の中にこれまで以上に支持する想いを強くする人が出現する、という例です。

 新しいものに順応する層の出現が、かえって原点に回帰した強固な層を生んでいるのではないか? ということです。数だけでは知ることができない、原点回帰者の“温度感”が高まっていることが、この点の注目点です。

 たとえ少数派になったとしても、原点回帰者の強い思いを貫くムードが顕在化した場合、新しいものに順応する層を凌駕することもあるかもしれません。

 資本主義が生み出した、世界の金融未開の領域をもターゲットとし、世界のお金を標榜する通貨“リブラ”を「新」と仮置きすれば、ドルを「現」、そして金を「旧」と、時間軸の異なる世界の通貨を定義できると思います。

 資本主義やITの発展の最中あるいは先端にあるドルやリブラに比べ、金は世界の通貨の中でも旧式であると言えます。ただ、近年、原点回帰者の温度感が高まっているという事象に当てはめれば、仮に、世界のお金の覇権争いが勃発した場合でも、高い温度感で根強く金を物色する人が存在し続けると考えられます。

図:世界のお金の覇権争い(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 強固な金(ゴールド)を支持する投資家が、金を今後も世界のお金として強く認め続け、それにより、金相場は長期的に下支えられる状況が続くのではないか、と筆者は考えています。

 リブラの登場をきっかけとして、改めて、お金の変遷、金(ゴールド)の存在意義の変化、そして世界のお金としての金(ゴールド)について考えてみました。

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[動画で解説]金(ゴールド)からリブラまで、お金の変遷を探る