金はドルから自由に。その後、通貨は信用を裏付けとし、ITの進化で決済手段が急拡大

 第2次世界大戦終了直前、金(ゴールド)は世界の主要通貨であるドルの裏付けとなりました。主要国同士でドルを交換する際、金(ゴールド)の交換も行われていたわけです。

 しかし、第2次世界大戦後、ドイツや日本が復興し、経済的に急成長するにつれ、通貨の独自色が強まり、同時に流通量が増えてきました。このような変化が顕著になるにつれ、徐々に、金がドルの裏付けであることが、かえって経済発展を妨げているのではないか?という議論を呼ぶようになりました。

 そしてついに、金はドルの裏付けとしての役割を終え、ドルを含んだ主要国の通貨は“信用”によって成り立つこととなったのです。

 図:お金の変遷【2】(ITの進化で金融未開の地の開拓がはじまるまで)

出所:各種情報をもとに筆者作成
 

「信用」で通貨が成り立つ社会になり、通貨の発行量を管理する中央銀行は、市場の資金需要の動向に応じ、通貨を発行しはじめました。需要に応じて資金供給するだけでなく、2008年に起きたリーマン・ショック後の金融恐慌では、中央銀行が市場に資金を供給する施策を進めたため、世界経済が復活しました。仮に、現在でも金がドルの裏付けであったならば、このような効果的な施策は行えなかったでしょう。

 信用でお金が成り立つ社会になったことで、個人レベルではクレジットカードでの決済が世界的に広がりました。そしてそこに急速なIT(情報技術)の進歩が加わり、決済手段の幅が急拡大しました。

 近年、電子マネー、バーコード決済、仮想通貨などが登場して世界的に普及が進んでいるのは、お金が信用で成り立つ世の中であるため、そして、安定したインターネット環境の拡充や、高性能の端末の普及など、急速にIT(情報技術)が進化したためだといえます。

 そしてリブラは、お金が信用で成り立ち、ITが進化した世の中で、資本主義の考え方を用いた金融の開拓が始まったことで生まれたお金だと言えます。

 紀元前から続くお金の変遷を振り返ってみました。

 物々交換において特異な性質を持つ金(ゴールド)がやがてお金になり、資本主義の考え方が社会を発展させ、その社会の発展が資金の需要を呼び込み、それに伴い金の需要が増しました。そして金は世界の最主要通貨であるドルの裏付けとなりました。

 しかし、戦後の復興・各国の経済発展が進むと金が裏付けである制度(金本位制度)が限界に達し、金がドルから自由になるときが訪れます(ニクソンショック ブレトンウッズ体制の崩壊)。それ以降、通貨は信用で成り立つようになり、ITの進化により決済手段が増えました。

 そして、未開の領域を搾取することで発展を成し遂げる資本主義的な考え方が個人の決済手段に取り込まれ、資本主義が生み出した最たる企業といえる米IT企業がリブラを提唱したのだと思います。

 物々交換、資本主義、お金、ITなど、さまざまな点をつなぐことで、リブラの誕生、そして金(ゴールド)がどのような変遷をとげながら世界のお金として用いられてきたのかが見えてきます。