米ドルの裏づけは、物々交換の時代に認められた特異性が起因

 以下は、物々交換で物が取引されていた時代から、金が主要国通貨の裏付けになるまでを得示したイメージ図です。

 図:お金の変遷① (金が主要国の“お金”になるまで)

出所:各種情報をもとに筆者作成

 マルクスの資本論によれば、「世の中の全ての物には価値がある」とされています。使用することで価値が生まれる「使用価値」の他、他の物と交換することを可能にする「交換価値」です。物々交換について考える上で、この「交換価値」が重要なポイントとなります。

 物々交換は数千年前から地球のあちこちで行われてきました。物々交換が可能なのは、対象となる物に「交換価値」があることを人々が認めていたためです。そして、物々交換の文化が広がると、今度はカカオ(アステカ帝国)や、稲(古来の日本)、場所によっては塩などが、汎用性のある交換価値があるものとみなされるようになります。

 やがて、腐らないために価値を保存できる、持ち運びに便利なように加工しやすい、輝いていて魅力的である、などの理由から、金(ゴールド)を含んだ金属を媒介とした物々交換の文化が拡大します。金が“お金”として使われ始めたわけです。

 先述のとおり、リラやマルク、両などは貨幣(コイン)の鋳造の際、一定量の金(ゴールド)を含むルールがありました。金(ゴールド)に物々交換を支える交換価値があるとみなされていたためです。

 そして、金(ゴールド)は第二次世界大戦終戦前、米ドルの通貨の裏付けとなることが主要国の間で決まりました。1トロイオンスの金を一定額の米ドルと交換することが基準化したのです。これにより、米ドルは各国の通貨の交換比率を一定に保ち、貿易の発展、世界経済の安定化を目指す体制ができました(ブレトンウッズ体制)。「金の裏付けがあるからドルが世界の主要通貨として存在できる」、言い換えれば、「金がドルを世界の主要通貨として存在させる役割を果たした」と言えます。

 物々交換の時代から、その特異な性質を認められお金となった金(ゴールド)は、世界の主要通貨である米ドルを支える重要な役割を担うようになったのです。