若い世代の、若い世代による、若い世代のためのファンドを!

 しかし、今井さんは直感していた。「いけるかもしれない」。

「その頃は新興国株式や中国株式のファンドが人気でした。中でも信託報酬を低く設定した商品はよく売れていたんです。ネット販売ならコストがかからない分、間違いなく安く売れるわけですから、それは絶対的な強みになるはずだと」

 そして、感触が確信に変わる出来事があった。

 あるとき、周囲の若手社員たちにインデックスファンドのシリーズ化について話すと、「そんなファンドがあったら自分でも買ってみたいですね、ぜひ作ってください」と、一様に興味を示したのだ。

 これからの時代、若い世代に活用してもらえるようにしなければならないという想いは、当時から抱いていたという今井さんだが、本当に興味を持つまでには道のりは簡単ではないだろうとも感じていた。そこへ若手社員たちの思わぬ反応があった。

「今までは若い世代が興味を持つような商品がなかっただけなんじゃないか。もしそんな商品を作り出せたら――そう考えると興奮しました」

 その後、今井さんたちの働きかけもあり、次第に社内も「チャンレジしてみよう」というムードに傾いていく。

 そうしてプロジェクトがスタートし、「どんな人でも安心して購入できる資産運用のツールを作ろう」というコンセプトを掲げた。具体的にはどこよりも安いこと、シンプルで使いやすいこと、豊富なラインアップを揃えることを追求することになった。

 ただし、すんなりと発売にこぎ着けたわけではない。当然、社内の同意を得るには本当に売れるのか、ビジネスとして成立するのか、データなりで示す必要がある。だが、新しい挑戦には前例がほぼないのだから、実証しようもなく、苦労した。数日かけて準備した企画案も、上長に提出すると即座にはねつけられ、ゼロからやり直すことも度々だったという。それでも全員で同じ未来図を描きつつ、力を合わせてゴールを目指した。