楽天証券のお客さま約2万8,000人の投票で投資信託(ファンド)を選ぶ中立性と実用性の高い「第4回・楽天証券ファンドアワード」。このアワードの最優秀ファンドをクローズアップする「プロジェクトF~ファンドの挑戦者たち」シリーズをお届けします。

第4回楽天証券ファンドアワード最優秀賞

海外株式部門:eMAXIS 全世界株式インデックス

国内不動産(リート)部門:eMAXIS 国内リートインデックス

海外不動産(リート)部門:eMAXIS 先進国リートインデックス

バランス(可変配分)部門:eMAXIS バランス(波乗り型)

 今回は三菱UFJ国際投信が4部門でファンドアワード最優秀賞に輝きました。海外株式部門では「eMAXIS 全世界株式インデックス」、国内不動産(リート)部門では「eMAXIS 国内リートインデックス」、海外不動産(リート)部門では「eMAXIS 先進国リートインデックス」、バランス(可変配分)部門では「eMAXIS バランス(波乗り型)」です。

 この授与を記念し、同社取締役社長・松田通氏と、楽天証券代表取締役社長・楠雄治の特別対談のもようをお伝えします。

 そして、人気ファンドを生み出すため、苦闘を繰り広げてきた同社社員の熱い想いにも迫ります。

三菱UFJ国際投信取締役社長・松田通氏✖楽天証券代表取締役社長・楠が対談 

三菱UFJ国際投信取締役社長・松田通氏(右)と4部門のトロフィーを前に

 今回4回目を迎える「楽天証券ファンドアワード」ですが、毎年必ず御社へトロフィーをお持ちしている感覚です。

松田社長 ありがとうございます。今回4部門で表彰いただきましたインデックスファンド・シリーズのeMAXIS(イーマクシス)シリーズは、投資の経験が少ないお客さまでも、豊富な品ぞろえの中から、ファンド選びがしやすい商品と自負しています。そのため、このようにお客さまの支持をいただけたのは、率直にうれしく感じています。

 弊社で口座開設した投資経験が少ないお客さまは、最初こそ数百円ですが、半年、1年とウォッチしてみると、自身で積立額を徐々に増やして投資信託を続けています。

今後もネット販売を主軸に」と語る松田通社長

松田社長 eMAXISシリーズの後に、よりコストにこだわってラインアップした「eMAXIS Slim」(イーマクシス・スリム)は2017年のリリース後、1年間で1,000億円もご購入いただきました。投資人口の広がりを感じますね。2018年からは、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などの制度のバックアップも大きいと考えています。

 そうですね。eMAXISシリーズは、若いお客さまでも自身でポートフォリオを組みやすいようにラインアップした商品ですね。

松田社長 当初よりネット証券さんでの販売を前提に構想しました。証券口座が銀行口座のような感覚になっていけば、「投資信託で資産形成」は、もっと一般化していくのではないでしょうか。

 弊社もネットの強みをもって投資環境を整え、さらに投資の裾野を広げていく努力を続けたいと考えています。 

≫≫海外株式部門:eMAXIS 全世界株式インデックスをチェック
≫≫国内不動産(リート)部門:eMAXIS 国内リートインデックスをチェック
≫≫海外不動産(リート)部門:eMAXIS 先進国リートインデックスをチェック
≫≫バランス(可変配分)部門:eMAXIS バランス(波乗り型)をチェック

プロジェクトF・ファンドの挑戦者

 続いて、海外株式部門でeMAXIS 全世界株式インデックス、国内不動産(リート)部門でeMAXIS 国内リートインデックス、海外不動産(リート)部門でeMAXIS 先進国リートインデックス、バランス(可変配分)部門でeMAXIS バランス(波乗り型)が最優秀賞受賞した、eMAXISシリーズの誕生に関わった同社の今井俊輔さんに独占インタビュー。そして、同社のイノベーションの元である若手社員たちのファンドにかける熱い想いを聞きました。

自分たちが本当に欲しいファンドを作ろう!

インデックスファンドは日陰者?

「そんなの無理に決まっているじゃないか」――フロア中に声が響く。

 先輩社員にこれから進めることになるインデックスファンドの目標額を聞かれ、とっさに答えた「50億円」。話にならないとばかりに一蹴された。この数字に根拠があったわけではない。反論はできなかった。

「あの頃は50億円なんて絶対無理だろうと誰もが思っていました。それがいまやシリーズ全体の純資産残高は4,000億円を超えます。もしあのとき、無理だと決めつけていたら、このシリーズは生まれなかったかもしれません」

 懐かしそうに話すのは、今回、海外株式部門をはじめ、4つの部門で最優秀ファンド賞を獲得した「eMAXIS」(イーマクシス)シリーズの誕生に関わった、現在はデジタル・マーケティング担当部長である今井俊輔さんだ。

「あの頃」というのは、今からおよそ10年前のこと――。

「インデックスファンドをシリーズ化したい」――入社3年目の若手社員から、商品開発部にこんな提案があった。

 当時、商品開発部に所属していた今井さんたちは、とりあえず検討を進めた。しかし、社内の多くはこの提案に乗り気ではなかった。というより後ろ向きなムードが漂っていた。

「当時のインデックスファンドは、主力ではありませんでした。1986年から当社ではインデックスファンドを出してはいましたが、せいぜい公募向けでは日経平均株価連動型やTOPIX(東証株価指数)連動型の商品を出しているといった程度でした」

 実は、若き提案者はこのときすでに「インデックスファンドをネット証券で販売する」というシナリオを描いていた――ネット販売なら店頭よりコストが抑えられる分、安く販売できる。これまで投資にほぼ無縁だった若い世代にも魅力を感じてもらえるはずだ――。

 しかし、当時はまだネット証券でもアクティブファンドが売れ筋上位だった時代。現実味に欠けるという意見が大勢を占めた。

若い世代の、若い世代による、若い世代のためのファンドを!

 しかし、今井さんは直感していた。「いけるかもしれない」。

「その頃は新興国株式や中国株式のファンドが人気でした。中でも信託報酬を低く設定した商品はよく売れていたんです。ネット販売ならコストがかからない分、間違いなく安く売れるわけですから、それは絶対的な強みになるはずだと」

 そして、感触が確信に変わる出来事があった。

 あるとき、周囲の若手社員たちにインデックスファンドのシリーズ化について話すと、「そんなファンドがあったら自分でも買ってみたいですね、ぜひ作ってください」と、一様に興味を示したのだ。

 これからの時代、若い世代に活用してもらえるようにしなければならないという想いは、当時から抱いていたという今井さんだが、本当に興味を持つまでには道のりは簡単ではないだろうとも感じていた。そこへ若手社員たちの思わぬ反応があった。

「今までは若い世代が興味を持つような商品がなかっただけなんじゃないか。もしそんな商品を作り出せたら――そう考えると興奮しました」

 その後、今井さんたちの働きかけもあり、次第に社内も「チャンレジしてみよう」というムードに傾いていく。

 そうしてプロジェクトがスタートし、「どんな人でも安心して購入できる資産運用のツールを作ろう」というコンセプトを掲げた。具体的にはどこよりも安いこと、シンプルで使いやすいこと、豊富なラインアップを揃えることを追求することになった。

 ただし、すんなりと発売にこぎ着けたわけではない。当然、社内の同意を得るには本当に売れるのか、ビジネスとして成立するのか、データなりで示す必要がある。だが、新しい挑戦には前例がほぼないのだから、実証しようもなく、苦労した。数日かけて準備した企画案も、上長に提出すると即座にはねつけられ、ゼロからやり直すことも度々だったという。それでも全員で同じ未来図を描きつつ、力を合わせてゴールを目指した。

eMAXISを資産運用のセンターポジションに

 そしてついに、同社初のインデックスファンド・シリーズ、「eMAXIS」シリーズが発売となった。2009年10月、最初にリリースされたのは、国内不動産(リート)部門で最優秀ファンド賞を受賞した「国内リートインデックス」、同じく海外不動産(リート)部門で受賞した「先進国リートインデックス」など計8本。国内外の株式、債券、リートなど主要な資産をひと通りラインアップした。

 ちなみに「eMAXIS」の「e」はeコマース(電子商取引)の「e」で、「MAXIS」は「MAX:最大の、最高の」と「AXIS:中心軸」を掛け合わせた造語。人々の資産運用のセンターポジションに高品質のプロダクトを提供するという思いを込めた。

 ただ、今井さんはある懸念を抱いていた。投資信託は全く売れず、姿を消すものも少なくない。何千本と発売されているから当然だが、本当に誰からも見向きもされない「不幸なファンド」があるのも事実だ。みんなで力を合わせて進めたeMAXISシリーズが、まさかその仲間入りをすることはないだろう――それでも今井さんの不安は拭えなかった。

 だが、その不安はすぐに解消される。発売間もなくして、ブロガーやメディア関係者、FP(ファイナンシャル・プランナー)などを招き、このシリーズについて意見を聞く場を設けたときだ。いくつかダメ出しもされたが、ほとんどの人が「いい商品だ」「応援したい」と言ってくれた。その言葉を聞き、今井さんは、近い将来の成功を確信した。事実、その後、「eMAXIS」シリーズは順調に販売額を伸ばし、同社の主力商品へと成長していく。

発想とアイデアにあふれるファンド開発

「私が入社した頃は、『eMAXIS』シリーズはすでに広く知られる存在になっていました」

 こう話すのはデジタル・マーケティング部のシニアマネジャー、野尻広明さんだ。
同シリーズが世に出た1年半後の2011年4月に新卒で入社。2年半、リサーチ部門に勤務した後、現在の部署に移り、新商品の企画やマーケティング戦略に携わっている。

 2009年10月、8つのファンドでスタートした「eMAXIS」シリーズは、その後、ラインアップを増やしていった。

 海外株式部門を受賞した「全世界株式インデックス」は2010年7月に、バランス(可変配分)部門を受賞した「バランス(波乗り型)」は2011年10月に追加された。この他、「豪州債券」や「欧州リート」など特定の地域にフォーカスしたものや、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」などテーマ型ファンドも発売している。また、2017年2月には業界最低水準の信託報酬を目指す、ネット限定の「eMAXIS Slim」(イーマクシス・スリム)シリーズ、2018年8月には宇宙開発やロボット、遺伝子工学など革新的なテーマに投資する「eMAXIS Neo」(イーマクシス・ネオ)シリーズがスタートしている。

デジタル・マーケティング部シニアマネジャーの野尻広明さん

 野尻さんもすでにいくつかのファンドを立ち上げている。その一つが全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)の動きに連動する「国内物価連動国債インデックス」だ。

「この部署に異動した翌年、物価連動型のインデックスファンドがあれば人気を呼ぶのではないかと考え、上司に『やらせてほしい』と直談判しました。最初はあっさり却下されましたが、確信があったので、いろいろ資料を揃えて、粘り強く説得すると、ようやくGOが出ました。あれはうれしかったですね」

 当時、野尻さんは20代半ばだったが、自らが中心となって商品化を進めた。

「この会社の面接を受けたとき、若い社員が活躍しているという印象を抱きました。そんな会社なら、楽しく働けると思って入社を決めたのですが、実際、その通りでした。仕事を任せてもらえるので、やりがいがあります」

 前出・今井さんは「『eMAXIS』シリーズは若手の力なくして成功はなかった」と話す。

「従来の投資信託と違い、20代から40代の『資産形成層』をメインターゲットとする商品ですから、ファンドの設定においてもマーケティングにおいても若い社員の発想やアイデアが決め手になりました。それに、そもそもこのシリーズは入社3年目の社員の提案から始まっているわけですし。今後も若い人たちにシリーズをけん引してもらいたいと考えています」

日本人の投資意識を変革する!

 2017年4月に新卒で入社した藤代竣介さんも、野尻さんと同じくデジタル・マーケティング部で商品企画やマーケティングにあたっている。大学時代、米国の投資信託事情を研究していた藤代さんだが、自分の周りには投資信託を保有している人がほとんどいなかった。米国の環境に比べて、日本では投資が身近ではないことに、「日本に投資文化を根付かせる仕事がしたい」と考えるようになり、運用会社を志望。学生時代、自ら「eMAXIS」シリーズを購入していたこともあって、同社への入社を決めたという。

デジタル・マーケティング部アシスタントマネジャーの藤代竣介さん

 そんな経緯があるだけに藤代さんは、投資に対する啓蒙に取り組みたいと話す。

「私が大学で投資信託の研究をしていたころに比べると、日本人の投資に対する関心はずいぶん高まってきたと思います。とはいえ、まだまだ米国には及びません。米国では中学や高校の多くがファイナンス教育を実施していることもあり、国民の金融リテラシーは非常に高いんです。そういう意味でも若い人たちが投資への理解を深めるような試みに取り組んでいきたいのです」

 実はすでにそうした試みをスタートしている。

 今春、実施した「eMAXISでつみたて動画コンテスト」だ。学生を対象に「eMAXISシリーズ」や「積み立て」をテーマにした動画作品を募集するというもので、この5月に選考が終わり、現在は特設サイト上で優秀作品を公開している。

「学生時代から投資に関心を持ってもらいたいと思い、開催したのですが、予想を上回る応募をいただきました。今後も学生コラボ企画の第2弾、第3弾を実施していきたいですね」

 2009年10月にデビューしてからちょうど10年。「eMAXIS」シリーズ誕生から受け継がれるチャレンジ・スピリットが次に何を生み出すのか、しばらくは目が離せないようだ。

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