「日本株アクテイブ軍」打者のファンドマネージャーは勝率6割を追求

 日本にはアクティブファンドだけでも数千本あると言われ、そのタイプはさまざまだ。組み入れ銘柄数を見ても十数のファンドもあれば、100銘柄、200銘柄のファンドもある。「ノムラ・ジャパン・バリュー・オープン」の場合、前担当者のときは40銘柄ほどだったが、伊藤さんが担当してから増やし、現在は130~140銘柄を組み入れている。特定の業種やテーマに絞らず、幅広く組み入れるため、おのずと多くなったという。

 また、どのくらいの頻度で銘柄を入れ替えるかもファンドによってまちまちで、中には設定時からほとんど入れ変えていないファンドもある。現在のノムラ・ジャパン・バリュー・オープンは、中長期的な目線で銘柄を組み入れるため、銘柄自体の入れ替え頻度は低い。ただし、少しでもリターンを積み上げるために株価の動きに応じて細やかなウエイト調整を心がけている。

「例えば収益予測を見直した結果、企業価値に比べて、明らかに割安でなくなったら除外します。その判断がつきにくい場合など、除外はしないものの、投資比率を下げることもあります。いずれにしても企業は生き物であり、株価は日々変動しているわけですから、こまめにポートフォリオを見直すのは当然ではないでしょうか」

 伊藤さんはさらに、組み入れ銘柄以外に300~400銘柄に及ぶ「予備軍」を用意している。いつかファンドに組み入れたいと考えているが、まだ割高だったりして組み入れるには至っていない銘柄だ。組み入れ銘柄を除外したときには、「予備軍」から新たに組み入れる。

 プロ野球に例えれば、不振の1軍選手と頭角を現してきた2軍選手を入れ替えるのだ。ちなみに300~400銘柄に及ぶ「予備軍」も固定されているわけではなく、随時見直しを行い、必要に応じて入れ替えているという。

 もっとも1軍に格上げしたものの、全く戦力にならないというケースもある。前述したように伊藤さんはあらゆるデータを分析し、経営者などにも話を聞いて、この銘柄は間違いないと思えばファンドに組み入れる。が、それでもいつも狙い通りにいくわけではなく、その会社を取り巻く環境がガラリと変わり、株価が急落、ひいてはファンドの基準価額に影響を与えるようなこともある。

「全ての銘柄の株価が上がっていくのが理想ですが、100本以上を完璧に的中させるのは不可能です。どんなに優れたファンドマネージャーでも百発百中はありえません」

 では、どれくらいの勝率なら合格と見なされるかというと6割が1つの基準だという。

「中長期に組み入れ銘柄の6割が市場全体を上回っていればアクティブファンドの運用成績としては上位に入るのではないでしょうか。逆に言うと4割程度はうまくいかないわけで、常に「判断を間違える≒予想は外れる」ことを念頭に置きながら過度なリスクを取らないようコントロールすることも重要だと考えています」