ファンドマネージャーは足で稼ぐ?

 それにしても1年間に500社前後も企業調査に足を運ぶというのは尋常ではない。年間240日前後勤務するとしても、1日平均2社。実際には丸1日デスクで資料を読んだり、レポートを執筆することもあり、午前中に2社、午後3社ハシゴするといったことも珍しくないという。もちろん地方企業に足を伸ばすこともあれば、海外の工場などに出向くこともある。

「ひと昔前は取材を申し込んでも断られることが多かったそうです。IR資料に疑問点があったので社長に話を聞きに行ったら門前払いを食らったといった話を先輩に聞いたこともあります。しかし、今はほとんどの企業が歓迎してくれます。だったら、その機会を逃すことはない。直接会って話すと、資料では分からないことが見えてきますから」

 そして、社内の雰囲気や従業員の対応などから内情を探ったりもするそうだ。また、プライベートで小売店や飲食店に入ったときも常に仕事の目で見てしまうという。

「もちろん上場企業の場合ですが、経営状態はどうなんだろうかとつい考えてしまうんです。それで食事もそこそこに従業員の様子とか、オペレーションとかを観察したりして。これはもう職業病かもしれません(笑)」

 どうやら伊藤さんも「365日24時間銘柄のことを考えていた」前任者の域に達しつつあるようだ。