ファンドマネージャーが明かす「隠れ割安株」指標とは?
「ノムラ・ジャパン・バリュー・オープン」はその名の通り、バリュー銘柄で構成されるアクティブ・ファンドだ。TOPIX(東証株価指数)を上回るパフォーマンス(運用成績)を中長期で目指し、割安な銘柄を選定してポートフォリオを組んでいる。
ただし、単に割安かどうかの指標となるPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の低い銘柄が選ばれているわけではない。
「私は『割安株』には2種類あると考えています。一つは、一般的なPERやPBRといった株価指標で見て割安な銘柄です。もう一つはそういった株価指標では一見割高に見えるものの将来の成長性を考慮すると割安だと判断できる銘柄です。私は後者を『隠れ割安株』と呼んでいます。こうした将来性を見込んだ銘柄も積極的に組み入れるようにしています」
とはいえ「隠れ割安株」を見極めるのは簡単なことではない。将来を見据えた上で割安かどうか判断するとなると、企業収益を予測する必要があり、ファンドマネージャーの力量が大きく問われる。
「私の前任者も、実はこの『隠れ割安株』に着目していたのですが、何十年もファンド運用を手掛けてきただけに、企業の将来を読むという確かな目の持ち主でした。同じチームにはならなかったので、普段から近くにいたわけではありません。しかし時折、企業調査などに同行すると、その着眼点、分析力など、とても勉強になりました。今は前任者から学んだことを生かしつつ銘柄の研究にあたっています」
ただし、現在運用担当の伊藤さんは、単純に前任者のやり方を踏襲しているわけではない。
例えば前任者はある程度、銘柄を絞り、それらを徹底的に分析するという手法を取っていた。対して伊藤さんは、最初からターゲットを絞るのでなく、広くアンテナを張り巡らせ、できるだけ多くの銘柄を研究するようにしている。
「今はこの業種とこの業種が好調だと枠を決めてしまうと、隠れた有望銘柄を見逃す恐れがあります。だから、思い込みや先入観を捨て去り、ありとあらゆる上場銘柄をチェックするように心掛けています」
さらに伊藤さんは「自分の目で見て、自分の頭で考える」が信条だ。
たとえ高名なアナリストが推奨する銘柄であろうと、絶対に情報を鵜呑みにはせず、自分自身で必ず検証する。それもただ単に資料を読み込むだけでなく、直接会社を訪ねて経営者や担当者に話を聞いたり、工場や店舗に足を運んで内情を探る。そうして「この会社は間違いない」という確信を得て、初めてファンドへの組み入れを検討する。事実、伊藤さんが年間で直接コンタクトする企業数は500社前後と、かなり多めだ。
「お客さまの大事な資産を預かるわけですから、やれることは全てやるのは当然でしょう。それに私はどんなことであれ、自分でやってみないと気が済まない性分なんです。もちろん周りの意見を全く聞かないわけではなく、参考にはしています。でも、そのまま受け入れる気にはなれない。自分が納得できるまで徹底して調査します」
正に妥協を許さない「職人ファンドマネージャー」と呼ぶにふさわしい。