「売りたい局面」を判断するために

J-REIT指数(日次終値ベース、2003年3月31日~2019年5月20日)

出所:Bloombergデータより楽天証券作成

「みんなが売りたい局面」か判断するにはどうすればいいでしょうか。分かりやすいのは、「不動産市況」です。J-REITの保有資産は不動産、分配金の出所は「不動産からの賃貸収入」のため、不動産市況が悪化すれば「賃貸収入が減る→分配金が減る→投資口価格(株価)が下がる」と連鎖します。

 上記グラフは2003年3月以降のものですが、この間で不動産市況が明らかに悪化したのは、リーマンショック前後のみだったと思います。

 では、次に「何か不動産市況の目安になるデータはないのか?」となるワケですが、前回の不動産のタイプ別で見たとおり、J-REITは賃料の上下が他の不動産のタイプ(住宅や商業施設など)より比較的大きい「オフィス」が約半分を占めています。そこで、「オフィス」のデータを検索すると「空室率」「賃料」「面積」などが出てきます。これらのなかで、最もJ-REITマーケットとの関連性が高いと言われているのが「空室率」です。

「空室率」は、「稼働率」と足し算すると、100%になります。満室の場合は、稼働率が100%、空室率が0%になります。

東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の空室率データ
 (2001年12月~2019年5月)とJ-REIT指数(2003年3月~2019年5月)

出所:各種データより楽天証券作成(月次データ)

 上記のように、空室率とJ-REIT指数には、かなりの相関性があります。2019年5月の空室率は1.64%です。リーマンショック前の最低値(2.49%)よりもさらに低下していますので、いつ反転してもおかしくありません。もうひとつ、賃料データも見てみましょう。

東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の空室率データと賃料データ (2001年12月~2019年5月)

出所:各種データより楽天証券作成

 賃料の水準は、リーマンショック前の最高値2万2,901円に対し、2019年5月は2万1,396円です。こちらも警戒が必要になってきました。

 というわけで、堅調に見えるJ-REIT市場ですが、「みんなが売りたい局面」への反転時期を見極める状況になっています。不動産市場は、上記3つのグラフの通り、いったん方向が変わると、しばらく同じ方向が続く傾向にあります。

 現在、J-REITを保有しているならば、少し減らす方向を考えてみてもいいかもしれません。逆に、保有していない場合は、下がりきったところで買う方向で検討してもいいかもしれません。上記J-REIT指数のグラフを参考にすると、リーマンショックのあと、4年間くらいは1,000ポイントあたりをうろうろしていましたので、「下げ止まったな」と感じたら、少しずつ買う方向で検討してみてください。