米中貿易戦争が鎮静化したら?

 仮に、米中貿易戦争が鎮静化に向かい、消費が増加すれば、石油在庫が減少し、OPECプラスの減産を継続する動機が減退します。また、化石燃料を使用することを推奨する方針が撤回されて米国の原油生産量が減少すれば、シェア争いが鎮静化してOPECプラスが増産する動機が減退します。イランやベネズエラへの制裁が解除され両国からの原油供給が回復した場合も、OPECプラスの増産をする動機が減退します。

 このように、OPECプラス内での交渉が決裂したり、トランプ大統領起因の減産継続のシナリオの前提が変わったりすることに注意が必要です。

 とはいえ、トランプ大統領起因の条件については、同氏の任期中、“米国第一主義”“偉大な米国を取り戻す”という強い意志が貫かれることが予想され、すぐさま米中貿易戦争が鎮静化させたり、化石燃料を使用することを推奨しなくなったり、敵対国への制裁を緩めることは考えにくいと思います。

 また、サウジ記者殺害事件の際に、米国に擁護してもらった負い目がある中で行われた2018年12月のOPEC総会で、サウジの石油大臣が、アラブ人のいでたちではなくスーツ姿で登場しました。ある意味、これはトランプ大統領が嫌う減産継続を、サウジが主導して決定したという色を薄める意図があったと筆者は感じました。

 しかし、5月19日のJMMCでは、スーツ姿ではなく、アラブ人のいでたちに戻り、以前のように石油の国のリーダーを強く印象づけました。

 トランプ大統領は、2020年の大統領選挙を見据え、大衆を味方につけるべく、原油高という“増税”を主導するOPECプラスをけん制するツイートをする可能性はありますが、今のサウジはそれを乗り越え、減産継続へ向けて鋭意調整に励んでいると考えられます。

 トランプ大統領起因の条件が変わらなければ、OPECプラスの調整さえうまくいけば、2018年同様、条件付きながら、減産継続となる公算が高いと筆者は考えています。

 今回は、原油市場における材料を俯瞰し、材料同士のつながりに着目しながら、今後の原油相場を占う上で重要なOPECプラスの減産が継続するかどうかについて考察しました。中東情勢など、目立つ材料は重要ですが、それはあくまで上昇要因の一つに過ぎないことに留意することが重要だと思います。

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