5月に注目したい新興株の動き

 時間の経過で消えてくれる類の“10連休リスク”。大型連休明けの5月相場は、名実とも令和相場入り。この日本固有のご祝儀ムードに、水を差したのが毎度のトランプ米大統領。これまで順調な協議進展ぶりを示し続けていたのが一転、態度を豹変させたトランプ政権。5月10日(日本時間13時1分)に第3弾の追加関税発動を予告すると、米中貿易摩擦への懸念を市場は織り込み始めます。10連休リスクから“トランプリスク"へ…。

 閣僚級協議では折り合わず、結局タイムオーバー。2,000億ドル規模の中国製品に対する関税が10%から25%へ引き上げられました。10連休明け7日から始まった貿易摩擦トレード(株先物売り、中国関連株の空売り)は、期限の週末10日まで継続。10日の13時1分の追加関税発動を目掛けたイベントドリブンですので、結果が判明した段階(10日の13時1分)で買戻しが入り、一旦は株価が上がるパターンが一般的です。ただ、今回分かりにくいのが、閣僚級協議を「10日も継続する」と発表された点。まだ交渉が決裂したとも言えない中、はっきりとしたリターンリバーサルが起きないまま10日の取引を終えました。

 米中摩擦を再びテーマにした5月第1週、日経平均株価は毎日下げて前週比で▲4.1%。東証マザーズ指数も同▲3.5%。令和相場のスタートダッシュ早々、「そう言えばSell in May(セルインメイ=5月に株を売れ)って格言あったね」的な展開ですが、ここから気にすべき新興株市場のポイントは何になるのでしょうか?

 5月第2週の13~15日にマザーズ銘柄の決算発表ラッシュが控えます。この3日間でマザーズ上場銘柄の約5割が決算発表を予定。新興株でも人気のある銘柄の株価は、仮需の買い(信用買い)で作られています。東証1部の銘柄と違って「買いに傾斜した形で決算を迎えがちなため、決算発表が鬼門になりやすい点は注意。

 ただ、それ以上に気にすべきは、米国による対中関税の引き上げ影響でしょう。米中とも経済的なダメージは避けられず、成長率の下押し圧力になります。また、閣僚協議がうまくいかず、さらなる制裁措置が示され、中国側も報復する泥沼化の可能性も残っています。これがリスク資産圧縮の流れにつながった場合、炭鉱のカナリアとなるのが上海総合指数(中国株)。この指数の下げに、相関が高いのが意外ですがマザーズ指数です。

 よりリスクの高い資産からの資金引き揚げが進む局面となるため、流動性の低い資産や、クオリティの低い資産は売り対象となります。これは、昨年の夏場に見られた現象で、当時は上海総合指数に連動しながら、とりわけリスク性資産の度合いが強いバイオ株がかなり売られました。上海総合指数がさらに崩れるようなら、新興株でもクオリティの高い銘柄を優先するのがベター。今回の決算発表でポジティブサプライズがあった銘柄や、業績や値動きの安定している銘柄が優位に立つと見られます。