【2】 8カ国の輸入禁止を口実に、昨年同様OPECは増産を実施するのではないか?

 この点については、次回5月6日(月・祝)のレポートで詳細を書きますが、OPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国合計24カ国で構成される組織)の減産の今後の方針に関わる話です。

 米国政府は、石油制裁によるイランの原油輸出量の減少分について、イラン石油制裁期間中でも世界に適切に供給が行われるよう、すでにサウジやUAEと協力していると表明しています。イラン制裁による供給減少分は、サウジなどが穴を埋めるため、急激な供給不足は起きないとして、市場を安心させているわけです。

 これは、2018年と同じ構図です。2018年5月にトランプ大統領が核合意を離脱しましたが、その数週間後(かつ6月のOPEC総会前)、サウジとロシアが減産期間中にも関わらず、増産することを口にしました。

 増産の目的は、制裁によって減少が見込まれるイランからの供給減少分の穴埋めでした。そして宣言通り、6月のOPEC総会で、限定的であるものの、減産期間中にも関わらず合法的に増産することが可能になりました。

 そして、サウジやロシア、イラク、UAEなどが年末にかけて増産を行いました。サウジとロシアの増産分の合計(日量およそ140万バレル)は、イランの生産減少分(日量およそ100万バレル)を大きく上回るものでした。(ともに2018年5月と11月を比較)

 減産遵守率100%以上を維持すること(減産を遵守すること)が増産の条件でしたが、2018年11月に減産遵守率が98%となり、6月の総会での合意事項は守れませんでした。

図:サウジとロシアの原油生産量  

単位:千バレル/日量
出所: ※JODIのデータをもとに筆者作成 ※Joint Oil Data Initiative=各国政府が整備している石油・ガスの需給データ(生産、輸出入、需要、在庫)を月次ベースで収集