【1】制裁遵守率は上がるのか?イラン産原油の不買は徹底されるのか?

【1】制裁遵守率は上がるのか?イラン産原油の不買は徹底されるのか? という点について、制裁の足並みが揃わず、想定外の供給増加が発生する可能性があると考えています。

図:イランの原油生産量

単位:千バレル/日量
出所:海外主要メディアのデータより筆者作成

 上図のとおり、前回の制裁時、急激にイランの原油生産量が減少しました(2012~15年)。その当時の、筆者が推計したイランの国別原油輸出量は以下のとおりです。

図:イランの国別原油輸出量 

単位:バレル/日量
出所:UNCTAD(United Nations Conference on Trade and Development/国連貿易開発会議)のデータより筆者推計

 上図内の、中国、インド、韓国、日本、イタリアの5カ国は、イランの原油輸出先における上位5カ国で、この5カ国で全輸出量の70%以上を占めます。

 前回の制裁時に、中国向けの輸出が増加していたことが分かります。“制裁の足並み”という点で言えば、乱れていたことになります。

 今後については、少なくとも2018年11月5日から猶予期間にあった8カ国が足並みを揃えて輸入量ゼロを達成しなければ、米国政府が目標とする“イランの原油輸出量ゼロ”、つまり制裁遵守率100%は達成できません。

 また、筆者が気になっているのは、“仕向地不明”の輸出がこの数カ月間、増加傾向にあることです。筆者はこれを、輸出先を不明にし、イラン産原油を輸入した国が米国の制裁対象になることから逃れるための、ヤミ輸出の一部だと考えています。

図:イランの国別原油輸出量(直近1年間) 

単位:千バレル/日量
出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

 この仕向地不明は、2018年11月から出現しているため、イラン制裁第2弾が発動されたことと関連があるとみられます。3月は全輸出量の17%を超え、徐々に多くなっています。