イラン制裁は昨年8月から発動中。猶予されていた8カ国の石油取引は5月初旬に発動予定

 制裁発動の経緯については以下のとおりです。

 核兵器の製造を行っていたとして、欧米諸国や中国、国連などは2010年ごろから数年に渡りイランへの制裁を行ってきました。2015年になり、イランが核兵器の製造などを行わないことと引き換えに、制裁を解除するとした、いわゆる「イラン核合意」を結び、2016年1月に制裁が解除されました。

 しかし、トランプ米大統領選の就任後、イラン核合意を巡る状況が変化します。合意内容に含まれていない危険な武器があると合意内容が不十分であるとし、数度に渡り、イランに対して合意内容の修正を要求しました。

 この要求に対し、イランが応じなかったため、トランプ大統領は2018年5月8日に、単独でイラン核合意から離脱することを表明し、イラン制裁を再開することが決まりました。その後、90日間の猶予期間を経て8月7日に制裁第1弾、180日間の猶予期間を経て11月5日に第2弾が発動しました。

 ただし、第2弾の石油取引については、中国、インド、イタリア、ギリシャ、韓国、日本、台湾、トルコの8カ国は180日間猶予されることになりました。

 そして、冒頭で述べたポンペオ米国務長官の言葉どおり、その猶予期限を延長することはなく、2019年5月初旬より、イラン産原油を購入することが、米国の主導の制裁によって禁止されることとなりました。イラン産原油を輸入した場合は米国による制裁の対象になると報じられています。

図:米国によるイラン制裁の概要

出所:各種情報より筆者作成

 

 以下のグラフは、イランの日本向け原油輸出量の推移を示したものです。如実に、11月5日の第2弾発動に向け、日本がイラン産原油を輸入しなくなったこと(ゼロにして制裁を遵守したこと)、そして、2019年5月初旬まで180日間猶予されることが分かってから、大きくイランからの輸入を増加させたことが分かります。

図:イランの日本向け原油輸出量 

単位:千バレル/日量
出所:海外主要メディアのデータより筆者作成

 

 今回、米国政府は期限が到来したため、8カ国のイランとの石油取引に関する猶予期限を終了させました(猶予期限の延長なし)。米国政府は、期限満了による猶予期限終了であり、従来の制裁の方針に立ち返り、“イランの輸出をゼロにする”という方針を堅持したわけです。

 猶予期限終了によって今後、イランからの供給がゼロになり、世界の石油需給がひっ迫する懸念が生じ、足元、原油価格が上昇、高止まりしているわけですが、原油相場の動向に深く関わるこのイラン制裁の今後を考える上で、筆者は次の2点が重要だと考えています。

【1】制裁遵守率は上がるのか?イラン産原油の不買は徹底されるのか?
【2】8カ国の輸入禁止を口実にOPEC(石油輸出国機構)が増産をしないか?