3カ月前の状況との比較、今後の見通し

OPECの減産状況

 1月から協調減産を再開したOPEC。昨年7月のピークからは減少傾向の一途をたどっている。サウジアラビアは昨年11月の日量1,100万バレル水準をピークに、3月時点では同980万バレル水準にまで生産を減らしている。4月以降も減産を強化する方針を示しているため、OPEC全体としてももう一段の減少が見込まれる。一見するとサウジアラビアの減産がOPEC全体の減産につながっている感があるが、実際のところはその他の加盟国の生産減少によるところが大きい。

 サウジアラビアは昨年4月以降、増産を繰り返してきた。7月からは減産(日量180万バレル)から増産(同100万バレル)へと政策が変更され、当時は原油価格が上昇傾向にあったことも相合わさり、同国は増産を強化した。3カ月前と比較すると、サウジアラビアは大幅な減産を履行しているようにみえるが、昨年同時期と比べてみると、生産量はほぼ同水準。増やした分を削っただけに過ぎない。それにもかかわらずOPEC全体の産油量が減少しているのは、減産を免除されている加盟国の生産減少が大きく影響している。

OPECとサウジアラビアの産油量

単位:1,000バレル/日、左軸OPEC、右軸サウジアラビア
出所:OPECのデータを基にクリークス作成

 減産免除国の中でも、足元ではベネズエラの生産減少の影響が大きい。経済危機(ベネズエラショック)以降、減産を強いられている同国だが、政情不安だけでなく米国の制裁により生産・輸出減に拍車がかかっている。今年に入り、両国の関係は一段と悪化、米国がベネズエラ産原油に対して制裁を強める方針を示した。

 ベネズエラ産原油の取引をしないよう働きかけ、米国以外の企業もベネズエラ産原油に手を出しにくくなった。これにより輸出量が断続的に減少する中、追い打ちをかけるように、大停電の影響で石油関連設備がダウン、さらに生産量および輸出量が落ち込んだ。ベネズエラの生産は、年明け以降、加速度的に減少、3カ月前に比べると生産水準が切り下がっている。

 イランの供給減少も懸念されている。米国の制裁により昨年6月以降、イラン産原油の供給量は大幅に落ち込んだ。11月に米国はイラン産原油の禁輸措置に関して、8カ国の適用除外を認めたため、それ以降は安定している。しかし、適用除外の輸入可能な期間は180日間であり、今年5月初旬にはその期限を迎える。

 3カ月前に比べると、足元の状況とはあまり変化はないが、5月以降にこの適用除外が解除されることになると、市場に出てくるイラン産原油は減少することは必至。この2カ国に加え、リビアも供給減少が懸念される。2月には主要油田の再開への期待が高まったが、4月に入り内戦本格化への警戒が強まっている。NOC(リビア国営石油)は、戦闘拡大により原油生産量がゼロに可能性があると警告している。年明け以降、生産量が上向きかけていた矢先、同国の産油量日量100万バレルほどが全面供給停止となる可能性がある。

 サウジアラビア以外に政策を順守する産油国の減産と、図らずも減産を強いられた減産免除国の生産減少により、OPECの産油量は日量3,000万バレル水準まで減少したことになる。サウジアラビアは4月も減少させる方針を示してはいるが、トランプ大統領からは原油価格上昇とそれを導いているOPECに対してけん制するツイートがある上、非加盟国ロシアからもプーチン大統領の他、エネルギー相や財務相から増産に転じるべきとの見解が聞かれているため、協調減産が続くのは6月末までとの見方も出始めている。

減産免除国の産油量 

単位:1,000バレル/日、左軸ベネズエラ、リビア、右軸イラン
出所:OPECのデータを基にクリークス作成