二極化するPER、製造業が低く、非製造業が高い

 TOPIX(東証株価指数)の平均PER【注】は、現在、14.2倍です。10年前には20倍以上ありましたが、その後、低下が続いています。その頃と比較して、日本株はPERで見て割安になったといえます。

 ただ、個別銘柄を見ると、PERは二極化しています。製造業のPERが低く、非製造業のPERが高い傾向がはっきり出ています。製造業は、利益が不安定なので、PERで高い水準まで買われにくくなっています。典型的な例が自動車株です。現在、高い利益をあげていても、リーマンショックのような不況があると、赤字に転落する可能性があります。貿易戦争のターゲットとなってダメージを受けるリスクもあります。世界経済の先行きに不透明感が出てきた今、日本の自動車株はPER10倍前後に据え置かれ、株価の上値は重くなっています。

 製造業と同様に、金融業もPERが低くなっています。マイナス金利時代を迎え、製造業と同様に、利益が不安定化するとの懸念が出ているためです。

 一方、サービス・情報通信など、非製造業は好調です。円高や世界景気悪化の影響を受けにくく、安定的に需要が伸びる恩恵を受けています。収益基盤が安定している非製造業はPERで高く評価される傾向があります。

PERの低い製造業・金融業・資源関連:2019年4月16日時点

注:PERは2019年4月16日株価を1株当たり利益(会社予想・2019年3月期または12月期)で割って計算。楽天証券経済研究所が作成

PERの高いネット関連・サービス・製造小売業:2019年4月16日時点

注:PERは2019年4月16日株価を1株当たり利益(会社予想・2019年3月期または12月期)で割って計算。楽天証券経済研究所が作成

21世紀に入り、製造業で成長するビジネスモデルが崩壊。サービス化社会を迎える

 20世紀は、モノの豊かさを求めて人類が努力した時代でした。当時は、生活を豊かにするモノを開発し、いちはやく安価に大量生産する技術を確立した製造業に投資すると、高い投資成果が得られました。ところが、21世紀に入り、状況は変わりました。モノは人気が出て一時的に不足しても、すぐ大量供給されて、価格が急落するようになりました。

 モノが供給過剰になる中、良質なサービスは供給不足が続いています。医療、介護、保育、教育、宅配、防犯、警備、熟練建設工など、良質なサービスが不足している分野はたくさんあります。サービスは、モノのように工場で大量生産することができないからです。供給を10倍にするためには、投入する人材を10倍にしないとならないような分野が数多く残っています。

 21世紀は、良質なサービスを安価に大量供給する仕組みを作った企業が成長しました。ITサービスは、いずれも、サービスの大量生産に道をつけるものです。Eコマースは、リアル店舗を作るコストを省き、ネットを通じて、小売サービスの量産を可能にしたものです。情報通信・サービス業に、PERが高い銘柄が多いのは、景気変動の影響を受けにくい安定成長の仕組みを作ったことに対する評価と言えます。

 今後、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、5G(第5世代移動体通信)、ロボットや、その応用分野(自動運転、フィンテックなど)から、21世紀の成長企業が多数出てくるでしょう。