2019年度がスタートしました。 進級、進学、入社、異動などにより、日本では、たくさんの人が新たなスタートを切り、これから起こることを想像し、心を踊らせる時期です。 このようなタイミングと、筆者が専門としている金や原油などのコモディティ(商品)分野に関連付け、今回は、人生の節目を彩り、司る、指輪のことに触れた上で、指輪に関わる貴金属について解説します。

指輪は、人生の節目を彩るもの

  指輪は歴史的にも、贈ったり、貰ったり、飾ったり、誇示したりする、人生を彩り、節目を司る重要なアイテムです。人の想いが込められた、生活に身近なモノとも言えます。 特に新社会人の方々は、これから様々な人と出会い、様々な場面に遭遇し、そして考え、行動する、その一歩を踏み出したわけですが、きっとこれから人生の節目で、指輪が登場すると思われます。そしてある時、ふと、この指輪は何でできているのだろう? 金やプラチナの価値はいくらなのだろう? などと思うかもしれません。

 想いが込められた身近な存在である指輪と深く関わる貴金属の事を知ることで、人生が味わい深いものになるのでは、と筆者は考えています。もし今、指輪を身につけている人であれば、改めて、その指輪を見つめ、考えてみると面白いと思います。

指輪は主に4つの貴金属でできている

 金やプラチナ、銀が有名 指輪はなぜ、貴金属でできているのでしょうか?その理由は、希少性とその性質にあります。 金、銀、プラチナ、パラジウムなどの貴金属とよばれる金属は、銅やアルミニウムという、世界で一般的に流通し汎用性のある金属に比べて、はるかに生産量が少ないことがわかります。

図:貴金属と汎用性のある金属の生産量(2015年) 

単位:トン
出所:トムソンロイター・*GFMSおよび**USGSのデータをもとに筆者作成
*GFMS=国際貴金属マーケットに関する調査分析を専門とするコンサルタント会社GOLD FIELDS MINERALSERVICES LTD(ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ社)
**USGS=天然資源調査・地図製作・地震観測などを行う米国内務省所管の研究機関(United States Geological Survey)

 鉱山生産における技術革新が進んだ現代でも、貴金属が銅やアルミニウムに比べて希少性があることに変わりはありません。また、性質の点では、貴金属には酸やアルカリに強いものもあり、長期間、身に付けることはもちろん、時代を越えて後世に同じ形のまま受け継ぐことができます。そしてある程度加工しやすく、貴金属同士を混ぜ合わせることで強度を増すこともできます。

 何より、有史以来、人類を魅了してやまないその輝きがあることが、貴金属の大きな特徴です。他の金属に比べて数量の面で希少で魅力的な輝きを放ち、身に付けることで権力を誇示したり、モチベーションを高めたりすることができる物質、それが貴金属であった、ということです。

 貴金属はこれまで、数千年にわたり指輪などの宝飾品に使われ続けてきましたが、これからもこれまで同様、宝飾品に使われ続けると考えられます。