4つの各貴金属の値動き要因

 4つの貴金属の値動きが、各種指輪の物質的価値に影響していることを確認しました。その4つの貴金属の値動きの要因について、4つの貴金属全体と貴金属個別、それぞれを以下のように考えています。

図:貴金属価格の変動要因(全体)

出所:筆者作成

 各種貴金属の価格は、世界景気や米国の通貨ドル、テロや戦争などの有事、そして各種貴金属の生産国の動向、投機筋など、さまざまな要因が絡み合って決まります。

 金価格が動いた時、世界で最も大きい先物取引所であるCME(シカゴマーカンタイル取引所)での出来高(取引が行われた数量 人気のバロメーター)が示すとおり、金の取引が最も多いため、金の値動きに他の貴金属の値動きがつられることがあります。

図:4つの貴金属の米国先物市場における出来高(2018年)

単位:百万枚
出所:CMEのデータをもとに筆者作成

 また、世界景気の動向に変化が生じた時、工業用の用途の割合が大きいパラジウムやプラチナ、銀の値動きに変化が生じることがあります。

図:4つの貴金属の消費内訳 (2017年)

出所:CMEのデータをもとに筆者作成

  また値動きの要因を4つの貴金属個別でみると、以下のようになります。

図:貴金属価格の変動要因(部分)

出所:筆者作成

 個別にそれぞれが変動要因を抱えています。このため、その時、全体的な流れの中で価格が決まっているのか、それとも個別の要因で動いているのかを考える必要があります。特に金においては1980年前後のような「有事=金価格上昇」のような単純な構造ではなくなってきている点に留意が必要です。

 宝飾品の代表格である指輪の素材は、歴史的に、世界中で希少性のある金属として用いられてきた、金、銀、プラチナ、パラジウムなどの貴金属です。今後、指輪を購入したり、誰かに贈ったりする節目を迎えた時、その純度(含有量)とその時のそれらの貴金属の価格をチェックしてみると面白いと思います。

 数年、数十年経つうちに、その指輪の物質的価値は貴金属価格とともに、変化していると思います。その変化を楽しむことができることもまた、指輪を身に付けることのメリットであると筆者は思います。