原油相場が、一時60ドルに達しました(WTI[ウエスト・テキサス・インターミディエート]原油先物、期近 1バレル当たり)。およそ4カ月ぶりの高値水準です。OPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)が減産を実施していることや、世界景気の回復期待などがその理由であると報じられています。

 一方で、米国の原油生産量と石油輸出量が増加している点も報じられています。米国はすでに世界No.1の原油生産国とみられ、ここからさらに生産量が増加することが見込まれています。そしてその膨大な原油生産量を背景に、石油製品の精製量と輸出量が増加し、2020年後半には米国が石油(原油+石油製品)の輸出国になるとされています。

 原油市場においては、足元、そして今後長期的に、米国の供給圧力が絶えず上値を重くすることが見込まれています。しかし、それでもなお足元、60ドルに達したのは、複数の上昇要因がその重石を押しのけるように作用したためだと考えられます。

 今回のレポートでは、上昇要因とみられるOPECプラスの減産、そして下落要因とみられる米国の原油生産量と石油輸出量、それぞれの3月中旬に公表された最新データを用いて、今後の原油相場の注意点を述べます。

 

世界景気、OPEC、米国石油事情、トランプ大統領、の4点に注目

 2019年の秋ごろまでの原油相場動向を考える上で、4つの注目点があると考えています。世界景気、OPEC、米国石油事情、トランプ米大統領です。

図:WTI原油価格の推移 (期近、日足、終値) 

単位:ドル/バレル
出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)のデータをもとに筆者作成

 

 この4点に、それぞれ以下のような点で注目しています。

 

図:2019年春から秋までの原油相場を考える上での4つの注目点について

出所:筆者作成

 

 

 世界景気は世界にある諸問題を、OPECプラスは7月以降も減産を継続するかを6月に決定するため、それらの動向を見守るというスタンスです。一方、米国石油事情トランプ米大統領は、傾向が明確に出ています。米国の原油生産量と石油輸出量が長期的な増加傾向にあるためです。トランプ大統領の原油価格やOPECへの考え方は、同氏のツイートから分かるとおり、首尾一貫して批判的です。

 トランプ大統領の原油相場への考え方については過去のレポート「なぜトランプ氏は原油価格にこだわるのか?原油市場を炎上させるトランプバズーカの理由を探る」をご参照ください。