米国は原油生産量の増加を背景に、2020年後半にも石油輸出国になる見通し

 米国の原油生産量と石油輸出量については、ともに長期的な増加傾向にあります。また、EIAは、これらが今後も増加することを見込んでいます。

図:米国の原油生産量の推移 単位:百万バレル/日量

出所:EIAのデータより筆者作成

 

 3月18日にEIAが公表した、米シェール主要地区の原油生産量は、13カ月連続増加となり、日量840万バレルに達しました。米国全体の生産量の70%を超えた計算になります。3月12日に公表された米国全体の原油生産量の見通しによれば、2月に公表された見通しがやや下方修正されたものの、それでも2020年12月は日量1300万バレルを超えるとされています。

 引き続き米シェールが、米国全体の原油生産量の増加をけん引するとみられます。

 また、さまざまな機関が報じている、2021年に通年で米国が石油の輸出国になるとみられる件ですが(筆者はこの件を“米国の石油輸出国化”と呼んでいます)、EIAが公表している月次統計でこの件に関する具体的なデータを確認することができます。

図:米国の石油(原油+石油製品)の輸出入量 単位:百万バレル/日量

出所:EIAのデータをもとに筆者作成


 EIAが公表した見通しでは、米国は2020年秋ごろから本格的に輸出国に転じます。石油製品の輸出拡大が主な要因です。すでに、米国はシェール主要地区の原油をはじめとした豊富な原油を用い、自国で精製をしてガソリンや留出油などの石油製品を作り、それらの製品の輸出を拡大する流れができています。その流れが今後も加速し、2020年秋には石油製品の輸出国になると見られています(原油の輸出国になることは今のところ想定されていません)。

 米国の供給増加は、従前より市場の懸念材料でしたが、ここにきて、米国が石油(原油+石油製品)の輸出国になるという具体的な見通しが大きく報じられました。これにより、市場における米国の供給圧力という懸念は、以前よりも高まったとみられます。