HEROZ

1.将棋AIを建設、金融、エンタテインメントに展開中

 HEROZ(ヒーローズ)は、自社製AIを組み込んだ将棋ソフト「ポナンザ」で有名な会社です。ポナンザは2013年に将棋ソフトとして初めてプロ棋士に勝利するなど高い能力を示してきました。2012年に配信開始したスマホゲーム「将棋ウォーズ」(現在約500万ダウンロード)では、有料会員に対してポナンザによる解析や対戦等のサービスを提供しています。

 現在は、将棋AIで培ったAI技術でディープラーニング等の機械学習システム「HEROZ Kishin」を構築し、これを将棋AIだけでなく、建設AI、金融AI、エンタテインメントAIへ展開しています。AIのアルゴリズム開発に特化し、アルゴリズム開発に必要なビッグデータ分析は顧客側で行っています。

 建設AIでは、竹中工務店と2017年11月に資本業務提携し、建築構造設計支援用AIの開発に取り組んでいます。構造設計の約70%を自動化することができるAIをHEROZと竹中工務店と共同で開発中です。建築構造設計の市場規模は年間約2.5兆円なので、これが実用化されると建築業界に対するインパクトは大きなものになると思われます。

 建築構造設計の第1弾のプロダクトは構造設計のチェック用AIで、既に竹中工務店で実際に使われており、来期から料金を受取ることになりそうです。

 実際の建築構造設計支援用AIの完成には、今後数年かかる見込みです。どの程度の売上高になるか今のところ不明ですが、楽天証券の予想では、設計用のパソコン1席当たりの月額チャージを想定すると、少なくとも年間数億円以上の売上寄与が遅くとも2022年4月期から期待できると思われます。

 

2.金融向け、エンタテインメント向けAIも有望

 金融向けでは、SMBC日興証券向けに個人顧客向け株価予測(短期予測)システムを2019年前半に導入する計画です。また、2018年1月からマネックス証券のFXトレード支援システム「トレードカルテFX」にHEROZ製AIが搭載されており、月額の継続フィーが入金しています。

 エンタテインメント向けでは、バンダイナムコホールディングス傘下のバンダイが2019年夏に発売する予定のデジタルカードゲーム「AIカードダス」の第1弾となる「ゼノンザード」にHEROZ Kishinが活用されることになりました。初期設定フィーのほか、売上高に応じた継続フィーが入金すると予想されます。また会社名は不明ですが、あるゲーム会社が今年中に発売するゲームソフトにHEROZ製AIが搭載される予定です。ゲームソフトの販売本数に応じたフィーが期待できます。

 この他にも、未公表のプロジェクトが複数ある模様です。

 

3.2019年4月期通期は会社予想通りか。来期以降は高率の利益成長が期待できよう。

 2019年4月期3Q(2018年11月~2019年1月)は、売上高3億9,500万円(前年同期は四半期決算を行っていない)、営業利益1億4,600万円となりました。今2Qに比べ小幅増収増益になりました。また、2019年4月期1-3Q累計では、売上高10億4,100万円(前年比19.4%増)、営業利益3億7,500万円(同22.9%増)となりました。

 今4Qは広告宣伝などの先行投資を行うため、利益水準は低下する見通しですが、通期では売上高13億円(前年比12.6%増)、営業利益4億円(同13.0%増)と、順調な業績が期待できそうです。

 また来期は、現在売上高の約40%を占めるB2B関連事業(建設、金融、エンタテインメント企業向けAI開発等)について50%程度の増収が期待できます。売上高の約60%を占める「将棋ウォーズ」等の個人向けゲーム事業はほぼ横ばいと予想されます。既に、前期(2018年4月期)からHEROZの業績の牽引役はB2B事業になっている模様です。

 楽天証券では来期2020年4月期業績を、売上高16億円(前年比23.1%増)、営業利益6億円(同50.0%増)、2021年4月期を売上高21億円(同31.3%増)、営業利益10億円(同66.7%増)と予想します。建築構造設計支援用AIの出荷開始は2022年4月期と想定していますが、建設、金融、エンタテインメントの各種プロジェクトの進捗に伴って初期設定フィーと継続フィーが入金するため、B2B事業で年率60%以上、全社で年率20~30%以上の増収が期待できると予想されます。営業利益も増益に伴い成長すると予想されます。

 今後6~12カ月間の目標株価を15,000円とします。2021年4月期楽天証券予想EPS(1株当たり利益)100.5円に、想定PEG2.0~2.5倍、2021年4月期楽天証券予想営業増益率66.7%増から算出した想定PER(株価収益率)約150倍を当てはめました。建築構造設計支援用AIの将来性に鑑み、来々期の2021年4月期予想業績より目標株価を算出しました。前回の8,500円から引き上げます。中長期での投資妙味を感じます。

注:PEG(ペッグ)は成長企業に対して使う投資指標。PEG=PER÷増益率(ここでは営業増益率)と計算する。通常はPEG=1倍が基準になるが、高成長企業のPEGは2~3倍以上へ高くなる傾向がある。

表1 HEROZの業績

株価    9,620円
発行済み株数    6,968千株
時価総額    67,032百万円(2019/3/20)
単位:百万円、円 
出所:会社資料より楽天証券作成    
注:発行済み株数は自己株式を除いたもの