米朝首脳会議の失敗で、日米貿易交渉がターゲットになる?

 米中貿易協議が一段落したことで、米政府は次の貿易交渉に動き始めています。今週6日から欧州との貿易協議を始めるようです。

 日本については、USTR(米通商代表部)のライトハイザー代表が、2月27日の米議会の公聴会で、対日交渉は「緊急性が高い」と説明。3月にも訪日して初会合を開きたいとの考えを表明しました。そして、「日本を含むアジア各国には為替の問題がある」と、通貨安誘導の制限など為替を議題とすることにも意欲を見せています。これに対して日本は、3月中の開催は難しいと伝えたとのことであり、4月以降に日米交渉を始めたいとの意向のようですが、相手の希望の時期よりもずれてくればくるほど、口先での強硬発言が高まってくることも予想されるため警戒しておく必要がありそうです。

 為替についてはトランプ大統領も、最近再び言及しています。

 3月2日の演説で、「中央銀行の金融引き締め策がドル高を招き、米経済に悪影響を及ぼしている」としてFRBを再び批判。ドルの水準については「外国との事業取引を妨げるような強すぎるドルは求めていない」とドル高をけん制しています。パウエルFRB議長についても、名指しを避けつつも「利上げを好み、量的引き締めを好み、非常に強いドルを好む紳士がFRB内に一人いる」と暗に批判しています。

 米朝首脳会談が予定外に不発に終わったことから、これをカバーするかのように、米経済に不利益となる利上げとドル高への批判トーンが、一段と高まってきているように見えます。

 今のところは、これらの発言が伝わった後も為替市場への反応はあまりみられていません。このまま単なる批判やけん制だけで終わればいいのですが、日米貿易交渉を見据え、開催時期が近づくにつれ、「ドル高・円安」に矛先が向いてくる可能性は十分に考えられます。

 円安要因の持続性と新たな円高材料、どちらの引きが強いか見極めるためにはもう少し時間がかかりそうです。